【感想】「深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢」(神戸ファッション美術館、会期:2021/9/11~11/7)レビュー

展覧会の概要

神戸ファッション美術館で開催されている「深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢」(会期:2021年9月11日~11月7日)に行ってきました。この展覧会は、透明樹脂にアクリル絵具で金魚を立体的に描く斬新な手法で知られる深堀隆介さんの作品展です。

神戸ファッション美術館「深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢」

 

展覧会の構成

インスタレーション
第1章 樹脂との格闘/進化する技法
第2章 2D ― 平面に棲む
第3章 遍在する金魚たち1 ― 支持体、形式の探究
第4章 遍在する金魚たち2 ― 日常の景色とともに
第5章 2.25D ― 表面と深さのはざまで
第6章 新展開 ― 生まれつづける金魚たち

 

感想①「まるで本物の金魚」

本展覧会の注目ポイントは、何と言っても、金魚たちが泳いでいる姿をリアリティ溢れる姿で描いた作品群でしょう。透明樹脂の上に金魚の一部分を描き、その上に透明樹脂を流し込み乾燥させてから再び金魚の一部を描く・・・という行程を繰り返すことで、まるで本物の金魚が水の中を泳いでいるかのような作品に仕上がっています。その表現力は驚くばかりです。

 

一合枡を中心に、木桶や椀、小鉢、弁当箱、柄杓、空き缶など、日常生活で目にする様々な容器のなかで金魚が泳いでいる姿は、何とも懐かしく心和む時間を与えてくれます。また、金魚だけでなく一緒に描かれた花びらや落ち葉なども、本物かと見間違えるような出来栄えでした。

 

感想②「制作ヒストリー】

この展覧会は、制作年順に作品を鑑賞することで、現在の制作技法が完成するまでのヒストリーが理解できる構成にもなっていました。初期の頃の平面的な金魚から、制作技法の進化とともに立体的な金魚へと進化していく様子がよく分かります。

 

また、透明樹脂を利用しない作品も展示されていました。和紙やパネル、布などに平面的に描いた金魚や段ボールを使った金魚など、その制作過程の試行錯誤の様子も窺えます。作家が格闘した産みの苦しみのプロセスが作品を通して垣間見えるような気がしました。

 

感想③「今後の展開」

今後の展開として、シンプルなイラストっぽい金魚を透明樹脂に描いた作品も展示されていました。ただ、このタイプの作品は、リアリティ溢れる金魚を観た後では、どうしても見劣りがしてしまいました。透明樹脂を利用する利点が弱まっているようにも感じましたので、やはり、写実性を追求はこれからも続けて欲しいですね。

 

イラストタイプの作品《僕の金魚園》は、最新のインスタレーションとして最後に展示されていました。この作品に関しては、SNSでの拡散もOKでした。

神戸ファッション美術館「深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢」

 

感想メモ

展覧会の副題として「金魚鉢、地球鉢」と記されていますが、このなかの“地球鉢”という表現が面白いですね。金魚鉢の中で飼われている金魚のように、私たちも地球という限られた世界(鉢)の中で生かされている存在だということでしょう。

 

新型コロナウィルスの流行は、私たちに「地球が汚れているよ」という地球からのメッセージではないか、との深堀さんの言葉がパネルに記されていましたが、その意見に納得してしまいますね。

 

展覧会情報

深堀隆介展 金魚鉢、地球鉢

会場:神戸ファッション美術館
会期:2021年9月11日(土)~11月7日(日)
休館日:月曜日(9月20日は開館)
観覧料:1,000円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:一部可能
図録:なし
関連図書:深堀隆介作品集 平成しんちう屋(PR)
Web:神戸ファッション美術館「深堀隆介展」
2021年10月24日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー