【感想】「住友コレクション名品選―フランスと日本近代洋画―」(神戸市立小磯記念美術館、会期:2021/9/4~11/14)レビュー

展覧会の概要

神戸市立小磯記念美術館で開催されている「住友コレクション名品選―フランスと日本近代洋画―」(会期:2021年9月4日~11月14日)に行ってきました。この展覧会は、現在リニューアル休館中の泉屋博古館東京(せんおくはくこかんとうきょう)が所蔵している住友コレクションの中からフランス絵画と日本近代洋画を厳選して紹介しています。

 

ちなみに、泉屋博古館は、住友家が収集したコレクションを所蔵・展示している美術館で、京都鹿ヶ谷にある泉屋博古館と東京六本木にある泉屋博古館東京があります。

 

展覧会の構成

Ⅰ 日本へのフランス絵画の請来
Ⅱ 日本近代洋画の精華
Ⅲ フランスと日本 美の対決
Ⅳ 戦後美術の珠玉

 

感想①「モネの2作品」

1910年代初頭までに日本にあったモネの作品は4点のみだったらしく、そのうちの2点が今回展示されている住友コレクションの2作品です。この2作品は、住友家15代吉左衛門を襲名した住友春翠がパリで購入した、クロード・モネの《サン=シメオン農場の道》と《モンソー公園》でした。

 

この2作品は、他の洋画と共に住友家の須磨別邸に飾られていて、当時は邸宅美術館的な役割を果たしていたようです。後の神戸空襲で須磨別邸は絵画もろとも焼失してしまいますが、掛け替えられていたモネの作品は奇跡的に残っています。この展覧会では、こうした運命的な2作品を鑑賞することができました。

 

1864年制作の《サン=シメオン農場の道》と第1回印象派展後の1876年に制作された《モンソー公園》では、彩度が明らかに異なっており、その間に印象派的な画風が強まり、筆触分割が駆使されるようになっていることがよく分かります。

 

感想②「日本人による近代洋画」

住友コレクションでは、日本人による近代洋画も充実していて、見応えのある作品が数多くありました。住友春翠や住友寛一、住友友成によって収集された、浅井忠、鹿子木孟郎、都鳥英喜、梅原龍三郎、藤島武二、岸田劉生、中川一政といった画家たちの作品が目白押しです。

 

岸田劉生と親交のあった住友寛一が収集した、岸田劉生の《二人麗子図(童女飾髪図)》も展示されていました。手の細さと胴体の不自然なアンバランスは、岸田劉生ならではの写実性ですが、そのアンバランスさが実に心地よく魅力的な作品になっていました。

 

また、住友友成はフォービスム系の作品を国内外問わず収集していて、ルオー、ヴラマンク、中川紀元、前田寛二、国枝金三、鍋井克之などの作品も鑑賞することができました。

 

感想③「比較展示の魅力」

この展覧会では、フランスと日本における美の対決と称して、比較展示がなされていました。これは楽しい企画ですね。フランスの巨匠たちの作品に立ち向かう日本人画家たちの意気込みが感じられました。

 

こうして眺めていますと、改めて日本人画家も凄いと思わせられました。堂々と洋画で挑戦している姿は勇ましいですね。そんな中、エルネスト=ジョセフ・ローラン《芍薬》vs.岡鹿之助《三色スミレ》が印象的でした。岡鹿之助が好んだモチーフである《三色スミレ》は、ある意味で日本人的な情感を湛えていて、実に神秘的な魅力を持っていました。

 

感想メモ

この展覧会では、一部写真撮影が可能な作品がありました。クロード・モネ《サン=シメオン農場の道》、クロード・モネ《モンソー公園》、藤島武二《幸ある朝》、ギョーム・セニャック《ミューズ》vs.山下新太郎《読書の後》の5作品です。

 

他の鑑賞者の方も、モネの作品を中心に熱心に写真に収められていました。展覧会場で、誰か一人が写真を撮り始めると、次々と写真を撮る方が増えてくるのが面白いですね。確かに、誰も写真を撮っていないところで、いきなりに撮り始めるのは少し勇気が要ります。

 

展覧会情報

住友コレクション名品選

会場:神戸市立小磯記念美術館
会期:2021年9月4日(土)~11月14日(日)
休館日:月曜日、9月21日(9月20日は開館)
観覧料:800円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:一部可能
図録:1,800円
Web:神戸市立小磯記念美術館「住友コレクション名品選」
2021年10月25日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー