展覧会の概要
丹波市立植野記念美術館で開催されている「広重展 -天才浮世絵師が描く日本名所紀行-」(会期:2021年9月18日~11月14日)に行ってきました。この展覧会は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師・歌川広重(うたがわ ひろしげ、1797-1858)の浮世絵版画展となります。
展覧会の構成
第一章 保永堂版東海道五拾三次之内
第二章 東海道
第三章 木曽海道六拾九次之内
第四章 江戸・諸国・伊勢
特別出品
感想①「保永堂版『東海道五拾三次之内』」
この展覧会では、最初に保永堂版「東海道五拾三次之内」(とうかいどうごじゅうさんつぎのうち)が登場します。流石に広重の代表作だけあって見事な出来栄えです。これまで、「東海道五拾三次之内」の一部を観ることはよくありましたが、全57作品を揃って鑑賞できたのは初めてでした。
広重の風景版画は、より印象的になるように現実の風景にこだわらず大胆なフィクションを交えて描かれています。また、人物の登場させ方も抜群で、風景と心情が相まって情感豊かな作品になっています。
例えば、《御油 旅人留女》(ごゆ たびびととめおんな)という作品では、腕や荷物を掴んで旅人を奪い合う宿の女たちの様子が面白おかしく描かれています。顔の表情も漫画的に描かれていて、実に楽しい気持ちになりました。
感想②「多様な広重版画シリーズ」
今回は、保永堂版「東海道五拾三次之内」以外にも、さまざまな広重の版画シリーズが展示されていて、こんなに種類があったのかと驚かされました。
人物が大きく描かれた「人物東海道」、広重と三代豊国(国貞)の合作「双筆五十三次」、歌川三羽烏と呼ばれた広重、国芳、国貞による競演作品「東海道五十三對」、狂歌入りの「東海道五拾三次」、有田屋版東海道など、それぞれ特徴ある版画シリーズが楽しめました。
こうして全体を眺めてみることで、保永堂版「東海道五拾三次之内」の秀逸さが改めてよく分かりました。風景の構図や人物とのバランス、その叙情性など、抜群のセンスが光っています。
感想③「浮世絵の基礎知識が学べる」
植野記念美術館の公式サイトに下記の解説動画がありましたが、非常に分かりやすい内容で、浮世絵の基礎知識が学べるようになっています。展覧会場でも、鑑賞ガイドが配布されていて、それを読みながら鑑賞しますと、より深く作品が味わえるように工夫されていました。
感想メモ
植野記念美術館では、毎年、関西文化の日企画として観覧料無料で入館できる日が設定されています。この日は混雑しますので、駐車場には案内員が配置されています。
私は、できる限り混雑を避けようと午後遅めに入館し、閉館時間直前までいましたが、それでもかなりの方が来られていました。普段はゆったりと鑑賞できる穴場の美術館ではありますが、このときばかりは人気美術館に変身します。しっかり、“関西文化の日”の役割を果たしているようですね。
展覧会情報
広重展
会期:2021年9月18日(土)~11月14日(日)
休館日:月曜日(但し9月20日[月・祝]は開館、21日[火]は休館)
観覧料:600円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:不可
関連図録:「広重 - 雨、雪、夜 風景版画の魅力をひもとく」(青幻舎、2,200円)(PR)
Web:植野記念美術館「広重展」