展覧会の概要
国立国際美術館で開催されている「コレクション 1 : 1968年展 -新しいパラダイムを求めて-」(会期:2021年10月12日~2022年1月16日)を鑑賞しました。
パリで起こった1968年の五月革命に象徴されるように、1960年代後半は世界の若者が激しい学生運動や政治活動に没入した時代でした。その影響は芸術の世界にも及び、既存の枠組みを破壊し過去をも否定するに至った時代でもありました。この展覧会では、こうした時代の様子を国立国際美術館のコレクションを通して眺めています。
展覧会の構成
第1章-視ることへの問い-「Tricks and Vision」と「空間から環境へ」
第2章-集団の論理-「プレイ」と「GUN」
第3章-芸術の解体-「ランド・アート」「シュポール/シュルファス」
第4章-ニュー・パラダイム-「もの派」再再考
感想①「心地よい視覚効果」
この展覧会は現代美術ということもあり、やはり、その意味するところやその価値を理解することは難しかったですね。ただ、展示室に入る前のオープンスペースに展示されている作品は比較的分かりやすいものでした。
これらは視ることの意味を問いかける作品群で、これもまた当時の新たな挑戦だったようです。高松次郎《波》《波の柱》、岡本信治郞《アリスの猫》など、その意図するところは別にしても、純粋に心地よい視覚効果が楽しめました。
感想②「発泡スチロール製の筏」
今回の展示では、「プレイ」や「グループGUN」といった美術家集団による挑戦の様子も知ることができました。当時、日本国内では前衛的な美術運動が活発化していて、近年、それを検証する美術展が各地で開催されています。
例えば、国立国際美術館で2016年に開催された「THE PLAY since 1967 まだ見ぬ流れの彼方へ」もその一つです。今回は、これに関連する“矢印形の巨大な発泡スチロール製の筏”が展示されていました。
この筏は、美術家集団「プレイ」が挑戦した“川下り”で用いられたもので、その内容は京都の宇治川から淀川を経て堂島川まで、発泡スチロール製の筏に乗って川下りをするという行為《現代美術の流れ》でした。今ではありふれた発泡スチロールですが、当時は貴重な新素材だったようです 。
感想③「もの派とは?」
そして、現代美術でよく出てくる“もの派”も登場していました。言葉は知っていても、その意味するところはよく知らなかったのですが、この展示を通して少し理解が進みました。
“もの派”の起源は、関根伸夫が野外彫刻展において、公園に巨大な穴を掘り、その穴と同型同寸の円筒形の土塊を対置した作品《位相-大地》だとされています。これは、従来の表現様式を全否定し、“もの”そのものが備えている姿そのものを見せることを特徴としているようです。
これは芸術界での唯物論というところでしょうか。物質そのものに焦点を当てて、芸術を展開しているようです。例えば、今回展示されていた吉田克朗《Cut-off No.2》では、大きな角材の上に厚さの異なる4枚の鉄板が置かれています。それぞれの鉄板は自身の重みで曲がっているだけで、人工的な力は加わっていないところがミソです。
感想メモ
このコレクション展の音声ガイドは、「ボイス・パレルモ」の音声ガイドと一体化していますので、そのまま利用できました。国立国際美術館では、このパターンが多いので助かります。写真撮影は許可制になっていて、受付で登録し腕章をつけると可能になります。
国立国際美術館のすぐ近くにある大阪中之島美術館が2022年2月2日に開館する予定ですが、そのプレイベントとして、中之島をめぐるデジタルスタンプラリー「アートなさんぽ」(2021年10月30日~2022年2月28日)が開催されていました。
国立国際美術館の地下1Fにも対象となるルネ・マグリットの作品写真がありました。一見、ポスター風の掲示なので注意して探さないと見逃しそうですね。
展覧会情報
コレクション 1 : 1968年展
会期:2021年10月12日(火)~2022年1月16日(日)
休館日:月曜日(ただし、12月27日(月)-1月3日(月)は休館、1月10日(月・祝)は開館し、1月11日(火)は休館)
観覧料:430円(一般)
音声ガイド:500円(「ボイス+パレルモ」と共通)
写真撮影:許可制
図録:なし
Web:国立国際美術館「コレクション 1 : 1968年展」