展覧会の概要
嵯峨嵐山文華館で開催されている「木島櫻谷 究めて魅せた『おうこくさん』」(会期:2021年10月23日~2022年1月10日)に行ってきました。この展覧会は福田美術館との共同開催となります。こちらの第2会場では“「おうこくさん」と衣笠村の画家たち”がテーマになりますので、衣笠を拠点に活躍した画家たちの作品も展示されています。
展覧会の構成
第1章 衣笠絵描き村の俊英たち
第2章 究めて魅せた芸術
感想①「身近な木島櫻谷」
最初に、木島櫻谷が外出時に使用していたトランクや帽子、時刻表などが展示されていました。雲の上の存在だった木島櫻谷が、いきなり身近な存在に感じられるから不思議なものです。
続いて、櫻谷が絵に自作の詩句を書き込んだ《富士詩画賛》が展示されていました。達筆すぎて私には読むことができませんでしたが、解説に掲載されている文章を読みますと、画家らしい色彩感溢れる詩になっていることが分かります。私たちが何気なく眺めている一つ一つの絵にも、こうした思いが込められていると思うと感慨深いですね。
(木島櫻谷《富士詩画賛》部分)
感想②「衣笠村の絵描きたち」
前期展示では、衣笠村の画家として、櫻谷以外に村上華岳、堂本印象、山口華楊、岩佐古香、菊池契月、徳岡神泉が登場します。同じ土地で活躍する画家たちが、それぞれ個性溢れる作品を残していることに驚きます。
菊池契月の《浦島》は、妖艶な世界観で浦島太郎を描いた衝撃作です。堂本印象《観世音菩薩》は、鮮やかな色使いが斬新な仏画で、観世音菩薩が童子に比べて圧倒的な存在感を示していました。
(菊池契月《浦島》部分)
感想③「初公開作品」
この展覧会では、木島櫻谷の新出作品が数多く含まれていました。そんな中で印象的だった作品は、雪の積もった冬景色を描いた《雪後》、6羽の烏を描いた《鴉群飛図》、余白が絶妙な《ひよこ図》や《飛燕之図》などでした。
嵐山で船を引っ張る人や筏流しの様子を描いた《嵐山筏引船図》という作品は、何気ない嵐山の日常を描いた作品ですが、実に味があって良いですね。
(木島櫻谷《嵐山筏引船図》他)
感想メモ「衣笠 絵描き村マップ」
1F展示室に「衣笠 絵描き村マップ」と題するパネルが掲示されていました。そこには、展覧会で登場する衣笠で活躍した画家たちの住居が示されていました。
これを見ますと、木島櫻谷宅を中心に、村上華岳や土田麦僊、小野竹喬、福田平八郎、堂本印象、菊池契月、菊池芳文、山口華楊、岩佐古香、徳岡神泉、金島桂華といった数多くの名だたる画家たちが、至近距離でひしめき合っていたことが分かります。何とも不思議な巡り合わせですね。
さらに2F廊下奥では、木島櫻谷(50代)と縁のある人々が映った1930年頃の映像が上映されていました。はる夫人がビデオに撮られるのを恥ずかしがって、逃げまわる様子が面白く思わず笑ってしまいました。
展覧会情報
木島櫻谷 究めて魅せた「おうこくさん」
会期:2021年10月23日(土)~2022年1月10日(月・祝)
休館日:毎週火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
観覧料:900円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:一部を除いて可能
図録:3,300円
Web:嵯峨嵐山文華館「木島櫻谷 究めて魅せた『おうこくさん』」