【感想】「2021年度 第4回コレクション展」(京都国立近代美術館、会期:2021/11/11~2022/1/16)レビュー

展覧会の概要

京都国立近代美術館で開催されている「2021年度 第4回コレクション展」(会期:2021年11月11日~2022年1月16日)を鑑賞しました。

 

今回のコレクション展は、生誕150年・没後90年を迎えた都路華香の特集や、上野リチの夫・上野伊三郎に関連する企画「モダン ⇄ ポストモダン 揺れ動く建築と建築家」など、充実した内容になっています。

京都国立近代美術館「2021年度 第4回コレクション展」

 

展覧会の構成

西洋近代美術作品選
生誕150年・没後90年 都路華香
モダン ⇄ ポストモダン 揺れ動く建築と建築家
近代工芸の意匠
前衛陶芸の時代
香月泰男と洋画における「単純化」
キュレトリアル・スタディズ15:八木一夫の写真

 

感想①「都路華香の振り幅」

9歳で幸野楳嶺の画塾に入った都路華香(つじ かこう、1871-1931)は、菊池芳文(きくち ほうぶん)、谷口香嶠(たにぐち こうきょう)、竹内栖鳳(たけうち せいほう)と共に楳嶺四天王の一人です。

 

今年は、都路華香の生誕150年・没後90年に当たる年でした。本展覧会では、コレクションから23点が出品されていました。《水底遊漁》と《埴輪》という二つに作品を比べてみても、とても同じ作家が描いているとは思えない程の振り幅に驚かされます。

都路華香《水底遊漁》一部

(都路華香《水底遊漁》一部)

都路華香《埴輪》

(都路華香《埴輪》)

 

さらに、この展示では、本画だけでなく下図も幾つか展示されていて、都路華香の制作過程を垣間見ることができます。かなり緻密に推敲を重ねながら制作を進めていることが分かりますね。

 

感想②「工芸のデザインについて」

工芸に関しては、そこに描かれる模様や装飾に焦点を当て、「くりかえしのデザイン」をテーマにした展示がなされていました。これは「上野リチ」展とも関連があるでしょう。

 

ここでは、同じ模様が繰り返し用いられた富本憲吉の作品《色絵飾筥》や、少しずつ変化しながら繰り返す森口邦彦の友禅着物《青晨》、繰り返す形状の中で美しい色彩が変化する三代宮田藍堂(宏平)のペンダント《積もる恋》、《恋秤》など、改めてそのバリエーションに気づかされます。

森口邦彦《友禅着物 青晨》

(森口邦彦《友禅着物 青晨》)

三代宮田藍堂(宏平)《ペンダント 積もる恋》と《ペンダント 恋秤》

(三代宮田藍堂[宏平]《ペンダント 積もる恋》と《ペンダント 恋秤》)

 

繰り返しの要素が少ない絵画と異なり、テキスタイルではくりかえしのデザインが一般的です。それは、材料や製造工程による制限などもあるようですが、くりかえしのデザインによる美的効果もあるでしょう。

 

工芸では、絵画的に描かれることもあれば、くりかえしのデザインとして描かれることもあります。一見矛盾する価値観にも、人間は“美”を感じるようですね。

 

感想③「八木一夫の写真」

今回、キュレトリアル・スタディズ15として、八木一夫の写真が大々的に展示されていました。八木一夫と言えば、前衛陶芸家としての「オブジェ焼」が有名ですね。しかし、今回は陶芸作品だけでなく、八木が撮影した写真が大きく取り上げられていました。

八木一夫《白い箱 OPEN OPEN》

(八木一夫《白い箱 OPEN OPEN》)

 

八木一夫は、散歩や旅行の合間によく写真を撮っていたようで、写真を見ていると思わず笑ってしまうような楽しい作品が数多くあり、前衛陶芸家としてのイメージとは異なる一面を見ることができました。

 

やはり、人間の心と遊離した芸術が人間の心を感動させるはずもなく、ある意味で当然なのかもしれませんが、八木一夫の人間的な温かみを感じさせてくれる展示でした。

 

感想メモ

京都国立近代美術館のコレクション展は、洋画や日本画、彫刻、工芸、写真など分野の異なる複数の展示がなされており、今回は7つの展示から構成されていました。大型美術館ならではの充実度ですね。

 

また、一部の作品を除いて写真撮影も可能ですので、自宅に帰ってから振り返る楽しみ方もできます。八木一夫の写真に関しては、図録も発売されていました。

 

展覧会情報

2021年度 第4回コレクション展

会場:京都国立近代美術館
会期:2021年11月11日(木)~2022年1月16日(日)
休館日:月曜日及び12月28日(火)~1月3日(月)*ただし1月10日(月・祝)は開館
観覧料:430円(一般)
音声ガイド:無料(スマホアプリ利用)
写真撮影:一部を除き可能
図録:1,760円(「八木一夫の写真」)
Web:京都国立近代美術館「2021年度 第4回コレクション展」
2021年12月06日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー