展覧会の概要
京都市京セラ美術館で開催されている「第8回日展京都展」(会期:2021年12月18日~2022年1月15日)に行ってきました。この展覧会は、日本最大規模の総合公募展「第8回日展」の京都巡回展になります。
展示作品は、全国を巡回する基本作品と、京都・滋賀の地元関係作家の作品からなります。日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門合計で、約500点が展示されていました。
展覧会の構成
1F 洋画
1F 彫刻
2F 日本画
2F 工芸美術
2F 書
感想①「洋画」
特選に選ばれた10作品のなかでは、内海洋江さんの《こもれび》が特に心に響きました。木漏れ日の中、圧倒的な存在感を示す大木の根元に、一匹の黒猫が近づいている様子が描かれています。淡い色彩でありながら、力強さも感じさせる色使いが見事でした。
特選に選ばれなかった作品にも良い作品がたくさんあって、その線引きが難しいところですね。構図や色彩などが良くても、どこか既視感のある作品はあまり評価されていないように感じました。
風景画では、一の瀬洋《御嶽の麓》、湯山俊久《水辺の陽》、成田禎介《燈台の島》、佃常觀《余呉川》、人物画では、木原和敏《そっと思う》、濱本久雄《夏至》なども、非常に好きな作品ですね。
感想②「彫刻」
特選に選ばれたのは8作品で、何れも具象表現に優れた作品でした。日展では、純粋に美を追究している作品より、人間の持つリアルな姿を内面も含めて表現した作品が評価されているようですね。
特選に選ばれた作品のなかで、境野里香さんの《たかい、たかい》は爽やかな作品でした。少女が猫を抱え上げた姿を彫像していますが、淡いオレンジ色の着色もイメージにピッタリでした。他の特選作品と比べると、魂が込められた作品と言うより、良い意味で癖の無いところが魅力の作品でした。
実際のところ、特賞に選ばれた作品であっても、自宅に飾っていつも眺めていたいかと問われると、躊躇してしまう作品があるのも事実です。もし、自宅に飾ることができるとすれば、嶋畑貢《夏の記憶》、九後稔《つなぐ》、堀内秀雄《或るカノン-円環に想いを託し》、西見智之《また会う日まで》、能島征二《希望の灯》、間島博徳《澪標》といった作品を選びたいですね。
感想③「日本画」
特選に選ばれたのは10作品で、何れの作品も一風変わった作風が印象的でした。榊原孔美子さんの《Aluhi 8:49》などは、漫画家やイラストレーターが描いたような不思議な魅力を放っていましたね。
同様に幻想的で不思議な魅力がある作品としては、長谷川雅也《幽愁》、加藤智《寂日》、丹羽貴子《窓の李》、上田勝也《風の聲》なども良かったです。今回の展示を観ていて、一口に日本画と言っても、究めて多様な画風があることがわかりますね。
感想4「工芸美術」
特選に選ばれたのは10作品で、作品単体の優劣だけでなく、作品の背景に横たわるストーリーも含めて評価されているように感じました。小畠泰明《乱流》という作品は、乱れ流れる水と人類が直面している混乱を重ね合わせ、平安な世界を望んで制作されたそうで、力強く斬新な表現ですね。
同じく波を表現した作品として、宮田亮平《シュプリンゲン 21-2》もありましたが、こちらは、シルバーとブルーの波が織りなす、円形の美しい造形作品でした。他にも、長尾保《記憶の渚 飾皿》、向井弘子《アナトリアの風》、今井政之《象嵌彩眼鏡持之魚大皿》、奥田小由女《終熄への祈り》、北川美千代《曼珠沙華》、松本由紀子《トポロジー 宇宙の形》など、魅力的な作品が目白押しでした。
感想5「書」
特選に選ばれたのは10作品でしたが、“書”に関しては疎いので、コメントは控えます。
感想メモ
各作品の横にQRコードが掲示されていて、スマホで読み取ると、作品解説が読めるようになっていました。尚、展覧会目録や図録はミュージアムショップで販売されていました。
ただし、ごく一部の作品を除いて写真撮影が可能ですので、手元に図録が無くても後で作品を確認することはできます。ちなみに、日展のホームページで、入選者名簿と審査所感、特賞受賞者・受賞理由が公開されていますので、興味のある方はご覧ください。
美術展情報
第8回日展京都展
会期:2021年12月18日(土)~2022年1月15日(土)
休館日:12月20日(月)、12月27日(月)~2022年1月3日(月)
観覧料:1,100円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:一部の作品を除き可能
図録:3,000円(第8回日展作品集)、3,200円(第8回日展図録【各部門別】)
Web:京都市京セラ美術館「第8回日展京都展」
日展公式サイト:日展