展覧会の概要
京都市京セラ美術館で開催されている「[2021 冬期]コレクションルーム」(会期:2021年12月11日~2022年3月26日)に行ってきました。この展覧会は、京都の四季に合わせて開催されているコレクション展の冬期バージョンです。
展覧会の構成
しずかなる絵
異国の情景
京焼の優品 楠部彌弌と近藤悠三
画家のアトリエ
室内にいる女性
時空を超えた眼
京都・染の系譜
感想①「木島櫻谷《寒月》」
冬期のコレクションルームは、木島櫻谷《寒月》から始まります。これは京都画檀の魅力を象徴するような作品で、一面が雪に覆われた静かな竹林に、一匹のキツネが餌を求めて歩いています。そして、空には月が懸かっています。実に叙情的で、木島櫻谷の力量が遺憾なく発揮された作品ですね。
(木島櫻谷《寒月》)
この作品は第6回文展で最高賞を受賞していますが、受賞を巡っては、東京画壇の横山大観が推していた安田靫彦《夢殿》と一悶着あったようです。木島櫻谷の《寒月》は、櫻谷の師であり京都画壇の代表格でもあった今尾景年が推していました。
これは、京都画壇が重視する絵画観と、東京画壇が重視する絵画観の違いを示していました。写実性や構図、叙情性を大切にする京都画壇に対し、東京画壇では、自由な画風を求め、斬新さや新たに挑戦する姿勢を評価していたようです。伝統か革新か、美術界でも競いながら進展しているようですね。
感想②「小野竹喬《冬日帖》」
小野竹喬は私の好きな画家のひとりですが、今回は郷里の岡山の風景を描いた作品《冬日帖》が展示されていました。この作品は、6枚一組になっていて、山や湖、海の景色が爽やかな色彩と俯瞰した構図で描かれています。どこまでも静かで透明な時間が流れているようです。
決して大きな作品ではありませんが、ある意味での桃源郷のような雰囲気が漂っています。どこか懐かしい気持ちになる作品ですね。農村を描いた作品では、歩いている小さな人の姿を確認することができます。
感想③「工芸作品」
コレクション展では、工芸作品も見所です。今回は、稲垣稔次郎《牡丹之図和紙糊絵屏風》や小合友之助《染額双馬図》、佐野猛夫《寂》などが楽しめます。
小合友之助《染額双馬図》では、躍動感溢れる2頭の馬だけでなく、背景には老木や滝などが描き込まれていて、ドラマティックな演出が楽しめますね。
感想メモ
京都市京セラ美術館メンバーシップ(旧:京都市美術館友の会)は、他の美術館と比べますと、価格設定(フレンド:6,300円、メンバーズニュースをメール配信にすれば、5,800円)が高いようにも思えますが、年2~3回ほど来館して一日に複数の展覧会を鑑賞すれば、十分見合う内容となっています。
コレクション展に関しては何度でも鑑賞できますので、年3回以上来館する予定があるなら、メンバーシップに登録することをお勧めします。チケット代を気にすること無く存分に楽しめます。
さらに、本来なら興味が無くて観ることが無いような展覧会であったとしても、メンバーシップなら無料や割引価格で観られるということで鑑賞してみると意外な発見があったりもしますよ。
美術展情報
[2021 冬期]コレクションルーム
会期:2021年12月11日(土)~2022年3月26日(土)
休館日:月曜日 *祝日の場合は開館/年末年始(12月28日〜1月2日)
観覧料:730円(京都市外在住の方)
音声ガイド:500円
写真撮影:1点のみ可能
関連図録:京都市美術館名品百選(PR)
Web:京都市京セラ美術館「[2021 冬期]コレクションルーム」