展覧会の概要
神戸市立小磯記念美術館で開催されている「貝殻旅行 -三岸好太郎・節子展-」(会期:2021年11月20日~2022年2月13日)に行ってきました。この展覧会は、三岸好太郎・節子という洋画家夫婦の波乱万丈の人生を辿りながら、その作品を紹介しています。
展覧会の構成
第Ⅰ部 男と女の旅
・第1章 プロポーズ
・第2章 プラチナの指輪
・第3章 貝殻旅行
第Ⅱ部 女流画家の旅路
・第1章 いばらの道
・第2章 風景を求めて
・第3章 永遠に咲く花
感想①「三岸好太郎」
札幌生まれの洋画家・三岸好太郎は、自らの予言通り31歳で人生を閉じることになります。その短い人生のなかで、彼は斬新な作品を残しています。
例えば、《少年道化》や《マリオネット》のような《道化》シリーズでは、人間の持つ多面性を描いているようでした。一方、貝殻や蝶をモチーフにした作品では、遊び心も感じられる楽しい仕上がりになっていました。
展覧会チラシに掲載されている《赤い肩かけの婦人像》は、節子をモデルにした鮮烈な作品ですが、節子はこの作品を評価していなかったようです。というのも、この作品は節子より好太郎の母親に似ていたからだと言います。
同じく、女性を描いた作品に《婦人像》というジョルジュ・ルオー風の少し抽象的な作品が展示されていましたが、これが何とも魅力的で独特のオーラを放っていました。
節子は「好太郎は女の顔にホトホト惑溺する。尋常の愛情ではこんな美しい顔は描けるものではない。女の魅惑への陶酔あって、はじめてこの繊細な美は生命を与えられるのだ」と語っていますが、これは作品の賞賛をしつつ、好太郎の女性に陶酔する傾向性にほとほと呆れていたのでしょう。
感想②「三岸節子」
節子の作品も、好太郎の作品に劣らず見応えがありました。20歳の自身を描いた《自画像》の力強い眼差しに、思わず引き込まれてしまいました。
特に印象的で好きな作品としては、《静物(金魚)》《鳥と女と》《シャトー・カルカッソン》《摩周湖》《グアディスの家》などがありました。何れも、構図や色使いが力強く熱い情熱を感じました。
この展覧会では、《さいたさいたさくらがさいた》の写真撮影ができました。この作品は、最晩年の力強い作品ですが、桜に対して節子は少し世間とは違うイメージを持っていたようです。「桜の花は命が短いから、むしろ生命への執着、執念はただごとではありません。」という言葉を残しています。
(三岸節子《さいたさいたさくらがさいた》)
感想③「夫婦の関係」
好太郎の訃報を聞いた節子は、「これで自殺せずに済んだ」と語っています。それほど、好太郎に振り回され続けた節子でしたが、好太郎の絶筆となった《女の顔》は、最後まで手放さずに自宅に飾っていたと言います。
この作品は、茶色のグワッシュ(不透明な水彩絵具)で節子を描いた作品ですが、節子にとって実に重みのある作品だったようですね。このあたりに二人の深い関係性が見え、作品の背後に二人の魂が宿っているように感じました。
感想メモ
この展覧会は、三岸好太郎・節子という洋画家夫婦の波瀾万丈な人生を通して、改めて「夫婦とはどのような関係なのか?」ということを考えさせられる内容でした。展示会場に、節子の折々の言葉がパネルで紹介されていましたが、それが何とも強烈なインパクトを残していました。
ショップコーナーの横で関連映像がエンドレスで流れていますのでお見逃しなく。内容は「三岸アトリエ」(約3分40分)、「三岸好太郎・節子 写真スライドショー」(約4分30秒)となっています。豊富な解説が掲載された公式図録も販売されています。
美術展情報
貝殻旅行 -三岸好太郎・節子展-
会期:2021年11月20日(土)~2022年2月13日(日)
休館日:月曜日(ただし1月10日は開館)、12月29日~1月3日、1月11日
観覧料:800円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:1点のみ可能
図録:2,680円
Web:神戸市立小磯記念美術館「貝殻旅行 ー三岸好太郎・節子展ー」