【感想】「寅年・新春記念展 丹波を訪れた四人の巨匠たち」(植野記念美術館、会期:2022/1/15~3/13)レビュー

展覧会の概要

丹波市立植野記念美術館で開催されている「寅年・新春記念展 丹波を訪れた四人の巨匠たち」(会期:2022年1月15日~3月13日)に行ってきました。

 

この展覧会では、丹波を訪れた4人の近代日本画の巨匠・小川芋銭(おがわ うせん)(1868-1938)、富岡鉄斎(とみおか てっさい)(1836-1924)、幸野楳嶺(こうの ばいれい)(1844-1895)、大橋翠石(おおはし すいせき)(1865-1945)の作品が展示されています。

丹波市立植野記念美術館「寅年・新春記念展 丹波を訪れた四人の巨匠たち」丹波市立植野記念美術館「寅年・新春記念展 丹波を訪れた四人の巨匠たち」

 

展覧会の構成

順路1 芋銭の章
順路2 鉄斎の章
順路3 鉄斎の章・楳嶺の章
順路4 翠石の章
順路5 寅の章

 

感想①「小川芋銭」

小川芋銭(茨城出身)は、市島地域にある西山酒造の西山泊雲との出会いを機に丹波を訪れ、最終的に西山家とは親戚関係になっています。

 

小川芋銭は「河童の芋銭」と呼ばれるだけあって、河童を描いた作品が見事です。水の中を優雅に泳ぐ河童を描いた《河童図》では、水中植物が明るい色彩でシンプルに描かれていて、河童の楽しそうな様子が伝わってきます。

 

また、木の上に座って頬杖をして真剣に考え事をしている河童を描いた《河童図》は、何ともユーモラスで見応えのある作品でした。

 

感想②「富岡鉄斎」

富岡鉄斎(京都出身)の実母は春日地域の生まれで、鉄斎自身も青垣地域に赴き筆を執っていたようです。

 

教養ある文人画家だった富岡鉄斎らしい力強い作品が並んでいました。人間味溢れる人物を描いた作品や山水画など、こだわることなく自由自在に描いている様子が窺えます。作品の至る所に鉄斎の教養が滲み出していますね。

 

感想③「幸野楳嶺」

幸野楳嶺(京都出身)は、氷上地域に半年余り滞在して作品を制作しています。竹内栖鳳や上村松園など、名だたる画家を育てたことでも知られる幸野楳嶺ですが、この展覧会では、雅号を“梅嶺”と称していた時代の作品も見ることができました。

 

鉢に植わった植物を描いた《睡蓮木図》や、大唐西域記に書かれた物語に基づく《帝釈試三獣図》、田能村竹田の作品に倣って描いた《雪山行旅図》、春の若鮎を瑞々しく描いた《春澗香魚図》など、その力量が遺憾無く発揮された作品が楽しめました。

 

感想④「大橋翠石」

大橋翠石(岐阜出身)は、柏原地域の岡林写真館へ山南地域の川代渓谷の写真撮影を依頼したことがきっかけで丹波を訪れています。

 

大橋翠石と言えば、虎を描いた作品が有名ですが、この展覧会でも存分に味わえます。特に、親子の虎を描いた作品が印象的で、親子の愛情深い関係が伝わってきます。

 

虎以外にも、極楽鳥やライオン、鳳凰、鶴、猫など、数多くの動物を描いた作品も展示されていました。また、3.0×2.5cmの超小型サイズで描かれた《極密山水小帖》という山水画では、拡大鏡を通して観られるようになっていました。

 

感想メモ

今回は、意外な画家たちが丹波に縁があることが分かり、作品と共に楽しめました。富岡鉄斎以外の画家に関しては、彼らの作品をまとめて観る機会が少なかったので貴重な経験となりました。

 

それぞれの画家の略年譜や解説が付された図録(1,200円)も販売されていました。ちなみに植野記念美術館で発行されている図録は、いつも安価ながら内容が充実しているのでありがたいですね。

 

展覧会情報

寅年・新春記念展

会場:植野記念美術館
会期:2022年1月15日(土曜日)~3月13日(日曜日)
休館日:月曜日
観覧料:600円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:不可
図録:1,200円
Web:植野記念美術館「寅年・新春記念展」
2022年02月14日|ブログのカテゴリー:2022年投稿, 展覧会レビュー