展覧会の概要
国立国際美術館で開催されている「コレクション2:つなぐいのち」(会期:2022年2月8日~5月22日)を鑑賞しました。この展覧会は「生と死」をテーマにしており、いのちにまつわる新収蔵作品を含む約110点の作品が展示されています。
展覧会の構成
1.描くよろこび、生きるよろこび
2.流れる時間とともに
3.生と性、わたしたちのからだ
4.生のなかの死、死のなかの生
5.すぎゆくいま
6.生のかたち
感想①「過去の記憶を内包した作品」
国立国際美術館で開催されるコレクション展は、理解困難な企画が多いのですが、今回は、いつになく分かりやすい内容でした。「生と死」がテーマですので、単純明快だったのかもしれません。
米田知子さんは、阪神淡路大震災があった1995年と10年後の2004年に神戸の様子を撮影しています。一見、平和に見える風景も、当時は市内で最も被害を受けた場所だったり、10年前は遺体安置所だったりしています。
過去の悲しい歴史や記憶を内包しつつも、諸行無常の理のごとく時間は過ぎていく様子が写し出されています。これと逆のケースが、フランスのユベール・ロベールや、イタリアの版画家・ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージのような過去の栄光を内包した廃墟絵画ですね。
感想②「既存の価値観への問いかけ」
ローリー・トビー・エディソンは、従来の“生と性”に関する価値観に疑問を投げかける作品を手がけています。美しい女性は細くて、立派な男性は逞しい肉体を持っている、といった既成の価値観を疑うべく、太った女性たちや五体不満足な男性のヌードを撮影しています。
確かに、平安期に美しいとされた女性はふっくらした、お多福顔だったとも言われていますね。ただ、「どちらが美しいと感じますか」と聞かれて正直な気持ちで答えるとすれば、大多数の人が支持する美の価値観にも一定の根拠はあるように思います。価値観の多様性を認める必要はありますが、美にも一定の方向性があるような気がします。
感想③「生と死を乗り越えて」
2021年7月14日に亡くなったフランスのクリスチャン・ボルタンスキーの作品も展示されていました。国立国際美術館でボルタンスキーの展覧会が開催されていたのが2019年2月~5月でしたので、その僅か1年数ヶ月後に他界されているわけです。
同じ作品を眺めていても、かつては現役作家の作品であり、今回は遺作として眺めることになりました。何とも不思議な感覚ですが、クリスチャン・ボルタンスキーという個性を持った魂の作品であることには変わりがありません。こうして、“生と死”を乗り越えて作品は永遠に伝えられていくのでしょう。
感想メモ
友の会の期限が終了しましたので、「OKミュージアムパスポート」(5,000円)をミュージアムショップで購入して、早速利用しました。これは、友の会に代わる年間パスポートとして新しく登場したものです。友の会カードと引き換えに1,000円引きで購入できました。
オシャレな友の会カードを記念に持っておきたい方は、割引サービスは利用できないようですね。ちなみに、コレクション展のみに絞った年間パスポートも「OKコレクションパスポート」(1,500円)として販売されています。
どこの美術館も、友の会の運営に苦労されているようで、鑑賞を中心としたシンプルなサービス内容に変わっていく傾向がありますね。それでも、国立系美術館はお得な価格でサービスを提供されているので助かります。
展覧会情報
コレクション2:つなぐいのち
会期:2022年2月8日(火)~5月22日(日)
休館日:月曜日(ただし、3月21日(月・祝)、5月2日(月)は開館し、3月22日(火)は休館)
観覧料:430円(一般)※特別展の料金に含まれる
音声ガイド:500円(「感覚の領域」と共通)
写真撮影:許可制
図録:なし
Web:国立国際美術館「 コレクション2:つなぐいのち」