【感想】「新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション」(京都国立近代美術館、会期:2022/1/29~3/6)レビュー

展覧会の概要

京都国立近代美術館で開催されている「新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション」(会期:2022年1月29日~3月6日)に行ってきました。この展覧会は、新たに岸田劉生の作品42点を一括収蔵したことを記念して開催されたもので、以前から所蔵していた岸田劉生の作品も合わせてすべて展示されています。

 

さらに、岸田劉生作品を旧蔵していた森村義行や松方三郎のコレクション、そして、岸田劉生の支援者だった芝川照吉のコレクションも合わせて展示されています。この展覧会は、急遽決まったようで、会期は約一ヶ月半という短い期間となっています。

京都国立近代美術館「新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション」京都国立近代美術館「新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション」

 

展覧会の構成

1 岸田劉生の生涯と画業
 1.1 銀座時代 1891ー1913
 1.2 代々木・玉川時代 1913ー1917
 1.3 鵠沼時代 1917-1923
 1.4 京都時代 1923-1926
 1.5 鎌倉時代 1926-1929
2 森村・松方コレクション
3 芝川コレクション

 

感想①「自画像」

新収蔵品のなかに自画像が3点含まれていました。1点目は《外套着たる自画像》(1912年)で20歳時の自画像になります。ゴッホ風の作品を描いていた時期のもので、明るい色調で希望に満ちている様子が窺えます。

 

2点目は杉板に描かれた《自画像》(1913年)で、思慮深い様子が描き込まれています。裏面には《土を愛するカイン(カインとアベル)》が描かれており、両面が見えるように展示されていました。

 

3点目は、娘の麗子がこの作品を描いている時の劉生が実に楽しそうだったと証言している作品《自画像》(1928年)です。帽子を被って、少しふくよかに描かれています。これら3点の自画像の雰囲気がまったく異なるところが面白いですね。

 

感想②「麗子裸像」

岸田劉生と言えば麗子像が有名ですが、新収蔵作品のなかに《麗子裸像》が含まれていました。麗子の裸像は油彩画には1点もなく、水彩画もこの1点のみと言います。他に、日本画が2点あるそうです。

 

岸田劉生の麗子を描いた作品を観ていますと、その時の様子が画面を通して伝わってくるようで、思わず微笑んでしまいます。麗子の澄ました顔とは対照的に、劉生の愛情深い心が見えてくるようです。

 

感想③「武者小路実篤の評価」

岸田劉生が満州の大連に滞在して制作した作品《大連星ヶ浦風景》に対して、作家の武者小路実篤は「劉生自身の味がぴったり出ている」と評し絶賛していました。

 

逆に言えば、この作品を観れば岸田劉生の味がどこにあるかが分かるということでもあるでしょう。爽やかというより色濃い個性的なタイプだったことが分かりますね。それでいて憎めない無邪気さを備えているように感じました。

 

感想メモ

今回は、コロナや雪の影響もあって会期末近くの駆け込み鑑賞となりました。展示作品数が83点(作品リストNo.より)と少なかった分、展示会場全体がゆったりして存分に楽しめました。図録(2,200円)も販売されていますので、貴重な岸田劉生作品を自宅でも楽しめます。

 

尚、詳しいギャラリートークがインスタライブ・アーカイブで公開されていますので、展覧会に来られなかった方は是非ご覧下さい。

⇒ 京都国立近代美術館インスタグラムアカウント

 

美術展情報

新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション

会場:京都国立近代美術館
会期:2022年1月29日(土)~3月6日(日)
休館日:月曜日
観覧料:1,500円(一般)
音声ガイド:無料(スマホ利用)
写真撮影:不可
図録:『岸田劉生のあゆみ』(2,200円)(PR)
Web:京都国立近代美術館「新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション」
2022年03月03日|ブログのカテゴリー:2022年投稿, 展覧会レビュー