展覧会の概要
嵯峨嵐山文華館で開催されている「絵でみる百人一首と枕草子」(会期:2022年1月29日~4月9日)に行ってきました。この展覧会は、2022年4月10日に開催される競技かるた「第3回 ちはやふる小倉山杯」に因んで、“百人一首”に関連した内容となっています。
公益財団法人小倉百人一首文化財団が運営している嵯峨嵐山文華館は、百人一首の撰者・藤原定家の山荘があったとされる小倉山の麓にあり、百人一首と深い関わりがあります。
展覧会の構成
第1章 絵と書でみる百人一首と和歌の世界
第2章 絵でみる『枕草子』
感想①「三十六歌仙の関連作品」
三十六歌仙は、平安時代の歌人・藤原公任(きんとう)が撰んだ優れた36名の歌人のことですね。今回は、酒井抱一に学んだ池田孤邨(こそん)の《三十六歌仙図屏風》が展示されていました。パネル解説では、それぞれの歌人の名前も紹介されていました。
(池田孤邨《三十六歌仙図屏風》右側作品)
尾形光琳の弟・尾形乾山の《三十六歌仙絵 伊勢》や岩佐又兵衛の《藤原清正像》なども鑑賞できました。そんな中、注目は伊藤小坡の《草子洗小町之図》です。これは、小野小町が歌の盗作疑惑を仕掛けられ、見事にそれを打ち破ったという能の演目のひとつを描いた作品です。
歌合わせで小野小町と対決することになった大伴黒主が、盗み聞きした小町の歌を古い和歌集に書き込み、既に古の歌人によって詠まれたものだと言いがかりをつけます。そこで小町は、その和歌集を水に浸し、黒主が書き込んだ歌だけ水に溶けて消えてしまうところを見せ、身の潔白を証明したという物語ですね。
感想②「百人一首の関連作品」
小倉山には百人一首の撰者・藤原定家の山荘があったとされ、その麓にある嵯峨嵐山文華館では、常設展示として「百人一首ヒストリー」が展示されています。ここでは歌仙人形100体も展示されていて、なかなかの景観です。
(嵯峨嵐山文華館「歌仙人形100体」)
「百人一首ヒストリー」では、様々な「百人一首かるた」や百人一首の原型となった藤原定家《小倉色紙》などもありました。また企画展では、藤原定家が机に向かって書きものをしている様子を描いた下村観山の作品《時雨庵》も展示されていました。下村観山は和歌山出身ですが、東京画壇で活躍した方ですね。
感想③「枕草子の関連作品」
「枕草子」は清少納言の有名な作品ですが、この清少納言も百人一首に登場しています。2階畳ギャラリーでは、『枕草子』の一節を紹介しながら、その場面と関連のある作品が展示されていました。
有名な書き出し「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。」に関連する作品としては、横山大観の《春曙》が展示されていました。
(横山大観の《春曙》)
これは、桜が咲く山々にあけぼの色に染まった背景を描いた作品で、横山大観らしい厳かな雰囲気を漂わせていました。更に、「夏は、夜。・・・・・・」の関連作品として、横山大観の幻想的な作品《月明》(前期のみ)が展示されていました。大御所の雰囲気が漂っていますね。
感想メモ
嵯峨嵐山文華館の2階展示スペースは120畳の畳ギャラリーとなっています。これは、日本の美術品は畳に座って鑑賞する習慣があったことに由来しているようですね。
そう言えば、たまに正座して作品を鑑賞されている方がおられます。本館の精神をしっかり受け止めて鑑賞されているようです。私は、畳を挟んで作品の対面に設置された椅子に座って遠くから眺めるのも好きですね。
美術展情報
絵でみる百人一首と枕草子
会期:2022年1月29日(土) ~4月9日(土)
休館日:毎週火曜日(祝日の場合は翌日)
観覧料:900円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:可能
図録:なし
Web:嵯峨嵐山文華館「絵でみる百人一首と枕草子」