展覧会の概要
あべのハルカス美術館で開催されている「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」(会期:2022年1月28日~4月3日)に行ってきました。この展覧会は、エルサレムのイスラエル博物館が所蔵している印象派の名作が鑑賞できる貴重な機会となっています。出品作の約8割が日本初公開です。
展覧会の構成
Ⅰ 水の風景と反映
Ⅱ 自然と人のいる風景
Ⅲ 都市の情景
Ⅳ 人物と静物
感想①「レッサー・ユリィ」
この展覧会は巡回展で、2021年10月15日から2022年1月16日にかけて三菱一号館美術館で開催されていました。その際に、レッサー・ユリィ(1861-1931)という画家が一躍有名になりました。開幕初日に絵葉が売り切れるという予想外の人気だったようです。
当初、イスラエル博物館と交渉していた三菱一号館美術館スタッフが、博物館側から提案されていたレッサー・ユリィの作品を希望リストから外しましたが、博物館側の強い推薦によって今回の展示が決まったと言います。
こうして日本ではまったく無名のレッサー・ユリィの作品が展示されることになり、これが予想外の人気を博することになりました。これを契機に、今後の展覧会でお目に掛かる機会が増えるかもしれませんね。
印象派特有の明るい色調ではなく、少しメランコリックで寂寥感のある作風が特徴です。特に人気となった《夜のポツダム広場》は、雨の道路に反射したネオンが美しく、愁いを帯びた空気感がどことなく心に染み込んできます。
(レッサー・ユリィ《夜のポツダム広場》(左)、《冬のベルリン》(右))
感想②「ルノワールの色気」
この展覧会では、ルノワールの作品が7点展示されていました。ルノワール作品を眺めていますと、改めてその筆触や色彩に色気を感じました。
例えば、風景を描いた《マントノン郊外》という作品では、郊外の家とその周囲の草木が描かれています。そこで、草木の描き方に注目しますと、ゴッホが得意とするような大きなうねりではなく、小さなうねりの組み合わせで描いている様子が分かります。それが何とも色気を感じるんですね。また、その色使いも若々しい濃厚さを伴っています。
静物画も数点展示されていましたが、ルノワールの静物画を観ていますと、境界線が曖昧で、メルヘンな異次元世界に紛れ込んだような錯覚に陥ります。そうした心地よさを味わえるのもルノワールの魅力の一つですね。
(ピエール=オーギュスト・ルノワール《花瓶にいけられた薔薇》)
感想③「光の系譜」
他にも、ゴーガンの《ウパ ウパ(炎の踊り)》やゴッホの《プロヴァンスの収穫期》など、心惹かれる作品が幾つもありました。
(ポール・ゴーガン《ウパ ウパ(炎の踊り)》)
(フィンセント・ファン・ゴッホ《プロヴァンスの収穫期》)
この展覧会は、印象派を中心に、バルビゾン派からポスト印象派、ナビ派に続く光の系譜を辿る内容でしたが、その時々でさまざまな光の表現が楽しめました。
屋外で制作を始めたバルビゾン派の描く風景は予想以上に暗く、だからこそ、印象派の光が余計に際だって目に映りました。筆触分割や点描法など、光を表現するための技術的な工夫も様々になされていましたね。
感想メモ
この展覧会では、一部の作品の写真撮影が可能となっていて、そこで人が少し滞留していましたが、全体的にはゆったりと鑑賞できました。音声ガイドも用意されていますので、じっくり楽しみたい方はご利用ください。
2021年11月から2022年1月にかけて大阪市立美術館で開催されていた「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」の半券があれば、裏面にスタンプを押してもらうことで、100円引きでチケットが購入できます。ただし、受付でのチケット購入には少し時間がかかりますので、急ぎの方は定価になりますが券売機での購入をお勧めします。
イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜
会期:2022年1月28日(金)~ 4月3日(日)
休館日:2022年1月31日(月)、2月7日(月)
観覧料:1,900円(一般)
音声ガイド:600円(声優:榎木淳弥)
写真撮影:一部のみ可能
図録:2,900円
Web:あべのハルカス美術館「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」