展覧会の概要
京都文化博物館で開催されている「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」(会期:2022年2月26日~4月10日)に行ってきました。この展覧会は、歌川国芳を中心に、その弟子たちの活躍にも注目した展示内容になっています。
この展覧会は巡回展で、図録を見ますと、これまでに名古屋市博物館、広島県立美術館、福岡市博物館、浜松市美術館、高崎市タワー美術館、郡山市立美術館で開催され、今回の京都文化博物館が最後となるようです。コロナ禍で中止になったり延期になったりしながら、長丁場の巡回展になったようです。
展覧会の構成
第1章 ヒーローに挑む
第2章 怪奇に挑む
第3章 人物に挑む
第4章 話題に挑む
終章 「芳」ファミリー
感想①「武者絵とその進化」」
歌川国芳の魅力は、何と言ってもその臨場感溢れる描き方でしょう。特に、武者絵では抜群の迫力で観る者に迫ってきます。また、大判サイズを3枚組み合わせたワイド画面の制作など、絶えざる工夫の跡も窺えますね。
水滸伝や源頼光の酒呑童子退治の物語など、伝説のヒーローたちの活躍を生き生きと描いている様子は見事です。≪源三位頼政鵺退治≫と≪宇治川合戦之図≫に関しては、制作年の異なる作品が2点ずつ展示されていました。これらは、同じシーンを描いた作品ですが、年齢を重ねることで精神性の深みが感じられる作風に変わっていますね。
(歌川国芳≪源三位頼政鵺退治≫ 文政年間(1818-30)後期)
(歌川国芳≪源三位頼政鵺退治≫ 天保14年(1843))
感想②「血みどろ絵」
第2章「怪奇に挑む」では、“血みどろ絵”と呼ばれる、血まみれになって殺人をしている様子を描いた作品が“これでもか”というばかりに並んでいました。ここでは、弟子の落合芳幾と月岡芳年の作品が存分に楽しめ(?)ます。
しかし、そのストーリー解説によると、こうした残虐な殺人が、実は勘違いからやってしまった行為だったという落ちが付いていたりします。血みどろの凄惨なシーンの裏には、後悔という悲しみが伴っているようです。
感想③「戯画の魅力」
さらに展覧会では、歌川国芳が得意とした当時の世相を描いた戯画が堪能できます。様々に擬人化された動物たちも登場し単純に楽しめました。しかし、その奥には江戸幕府に対する批判も込められていたようですね。
(歌川国芳≪亀喜妙々≫嘉永元年(1848)頃)
こうした自由な画風が弟子たちに受け継がれていく様子もよくわかりました。歌川国芳の魅力に引き寄せられた“「芳」ファミリー”の活躍が一世を風靡していたようです。そうした中でも、“最後の浮世絵師”とも呼ばれる月岡芳年の作品には、特に魅力を感じましたね。
(月岡芳年≪新撰東錦絵 延命院日当話》明治18年(1885))
感想メモ
3月23日から4月8日まで、平日限定で先着35名に本展ポスターがもらえるキャンペーンが開催されていました。当日は、開館時間の10時少し前に到着しましたが、既に並んでいる方が10~20名ほどおられました。そして、展示室の入り口にボックスが置かれていて、その中にポスターが入っていました。希望者は自由に取れるようになっていましたので、無事にポスターを頂くことができました。
一方、3/23の公式ツイッターで、図録の在庫が少なくなってきたと書かれていましたので、まだ在庫があるか少し心配でしたが、今のところあるようでした。ただ、会期末まで持つかどうかは分かりませんので、図録が欲しい方は早めの来館をお勧めします。
美術展情報
挑む浮世絵 国芳から芳年へ
会期:2022年2月26日(土)~4月10日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
観覧料:1,400円(一般)
音声ガイド:600円(声優:鳥海浩輔)
写真撮影:可能
図録:2,300円
Web:京都文化博物館「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」