展覧会の概要
泉屋博古館で開催されている「旅スル絵画 ― 住友コレクションの文人画」(会期:2022年3月26日~5月15日)に行ってきました。この展覧会では、住友コレクションから「旅」をキーワードに、江戸時代の京・大坂を中心とする文人画がピックアップされています。
展覧会の構成
絵の中を旅する ――旅立ちのガイド
画家が旅する ――人・知・景を求めて
絵画が旅する ――泉佐野・挾芳園の中国名画
異国の画家が旅する
関連展示 住友友親の書画ライフ
感想①「日根対山」
最初の「絵の中を旅する」と題したコーナーに、日根対山(1813-1869)の《四季山水図巻》が展示されていました。この作品は、長さが約5mにも及ぶ巻物で、まさに絵の中で旅ができる内容になっています。勿論、展示はその一部のみですが、爽やかな色彩が心地好い旅気分を味わわせてくれました。
日根対山は現在の大阪府泉佐野市出身の画家で、土佐派の桃田栄雲や大坂の岡田半江に就いて南画を学んだようですね。この展覧会は、京都国立近代美術館で開催中の「サロン!雅と俗」とも関連した内容で、より興味深く鑑賞できました。
感想②「親子の違い」
今も昔も親子で画業を営んでいる方々がおられますが、この展覧会ではその観点からも楽しめました。今回は、浦上玉堂の息子である浦上春琴の作品が展示されていました。
50歳で脱藩し、息子二人を連れて諸国を巡りながら絵画を制作した浦上玉堂は、究めて個性的な文人画家というイメージですが、浦上春琴の作品は実に優しい山水画や静物画でした。丁寧で素直に描かれた作品は、父親の浦上玉堂とはまったく異なる画風で、その性格の違いが如実に表れていましたね。
他にも、岡田米山人の息子である岡田半江の作品も展示されていました。こちらも、自由奔放な米山人の作品とは違って、詩情豊かな作風が魅力的でした。作品を通して画家の性格がにじみ出るところが面白いですね。
感想③「沈南蘋」
沈南蘋は来日して日本の画家に大きな影響を与えた中国・清の画家ですが、その作品が全国で求められた結果、贋作も多数出回ったようです。そんな中、《雪中遊兎図》は沈南蘋の真作として認められている作品で、見事な出来栄えでした。
《雪中遊兎図》は、京都国立近代美術館「サロン!雅と俗」の前期展で暫く展示されていましたが、その後は、所蔵元である泉屋博古館で展示されていましたので、こちらで再会することになりました。
この展覧会では、「異国の画家が旅する」コーナーに展示されていましたが、まさに、「絵画が旅する」コーナーに展示してもいいような気分でしたね。
感想メモ
地下鉄東西線「蹴上駅」から、蹴上トンネルをくぐって南禅寺を通るルートで泉屋博古館に向かいましたが、良い天気だったこともあり実に気持ちの良い散歩道でした。京都らしい風情があって、次回は途中にあった野村美術館にも立ち寄りたいですね。
展覧会情報
旅スル絵画 ― 住友コレクションの文人画
会期:2022年3月26日(土)~5月15日(日)
休館日:月曜日
観覧料:800円(青銅器館観覧料金も含む)
音声ガイド:なし
写真撮影:不可
図録:蔵品図録あり
Web:泉屋博古館「旅スル絵画 ― 住友コレクションの文人画」