【感想】「辰野登恵子 ー身体的知覚による版表現」(BBプラザ美術館、会期:2022/4/19~6/19)レビュー

展覧会の概要

BBプラザ美術館で開催されている「辰野登恵子 ー身体的知覚による版表現」(会期:2022年4月19日~6月19日)に行ってきました。この展覧会は、平面による抽象表現を追求した辰野登恵子(1950-2014)の版画作品に焦点を当てた内容となっています。

BBプラザ美術館「辰野登恵子 ー身体的知覚による版表現」BBプラザ美術館「辰野登恵子 ー身体的知覚による版表現」

 

展覧会の構成

1970年~2013年の作品がほぼ制作年順に展示

 

感想①「具象と抽象の狭間」

辰野登恵子の作品は、円や円柱、四角などの形状の要素がさまざまに組み合わされ、抽象的であるもののどこか懐かしさを感じるような不思議な感覚に打たれます。

 

葡萄やトウモロコシ、ドラム缶を連想させるような形状に、心地好い色彩が絶妙にマッチしています。具体的な対象を描いているわけではありませんが、かと言って、純粋な抽象画でもない境界世界を描いているようです。

 

感想②「作家の文章やインタビュー記事」

これは、BBプラザ美術館の特徴でもありますが、大抵の展覧会では作品と共に、作家の言葉が紹介されています。第三者による解説ではなく、作家本人の考え方やエピソードを直接知ることができる貴重な資料ですので、とてもありがたいですね。その空間に作家がいるかのような気持ちで作品に向かうことができます。

 

今回の展覧会でも、辰野登恵子の言葉が数多く掲出されていますので、作品を鑑賞しながら、その考え方を知ることができ楽しめました。

 

「画家は、具体的なものを写すのではなく抽象的な空間を探すのです。最終的にはそれが一番問題になるわけで、何が描かれているかは重要ではありません。」(辰野登恵子)

辰野登恵子《UNTITLED 97-13》

(辰野登恵子《UNTITLED 97-13》)

 

感想③「哲学的な芸術論」

展示室では、作品以外にノートの一部も掲出されていました。そこに、“拒否”と題して、ふたつの内容が取り上げられていたのが印象的でした。

 

拒否

①印象主義の受身の眼差し
②後期印象派の様式化とその固定的な体系

 

芸術の大きな潮流の中で、その流れに流されまいとする奮闘ぶりが窺えますね。なかなか刺激的な言葉で綴られていました。

 

感想メモ

この展覧会は、全作品の写真撮影が可能でしたので、しっかりスマホに収めてきました。こうした試みは、後から見返すことができるので本当にありがたいですね。本物の作品を観ることでしか分からない肌感覚を楽しんだ後で、時間をおいて、その記憶を辿りながら改めて写真を眺めると感慨深いものがあります。

 

展覧会情報

辰野登恵子 ー身体的知覚による版表現

会場:BBプラザ美術館
会期:2022年4月19日(火)~6月19日(日)
休館日:月曜日
観覧料:400円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:可能
図録:なし
Web:BBプラザ美術館「辰野登恵子 ー身体的知覚による版表現」
2022年06月20日|ブログのカテゴリー:2022年投稿, 展覧会レビュー