展覧会の概要
京都市京セラ美術館で開催されている、「[2022 春期]コレクションルーム 特集『絵になる京都』」(会期:2022年4月29日~7月10日)に行ってきました。この展覧会は、京都市京セラ美術館の所蔵作品から、寺社仏閣や自然、近代化する街並、現代に残る風情など、時代を超えて描かれた「絵になる京都」が特集されています。
展覧会の構成
春の名品
春から初夏へ 萌立つ季節
絵になる京都1 画家の視点
釉薬の彩り 宇野家の作陶
絵になる京都2 鮮彩な工芸
絵になる京都 3 光そそぐ風景
モチーフとしての京都市美術館
魅せる初夏の工芸
感想①「菊池芳文《春の夕・霜の朝》」
今回の名品紹介は、菊池芳文《春の夕・霜の朝》でした。菊池芳文は、幸野楳嶺に師事し、竹内栖鳳・都路華香・谷口香嶠とともに「楳嶺門下の四天王」と呼ばれた方ですね。
《春の夕・霜の朝》の右隻には、春の夕景に数羽の鳥たちが飛んでいる様子が描かれています。さらに、それと対をなすように、屋根を背景に桜の花が咲き、枝には一羽の大きめの鳥が留まっています。絶妙な構図です。
一方、左隻には霜が降りた冬の朝が描かれています。さらに、冬枯れの木の枝にはつがいの鳥が留まり、互いに語り合っている様子にも見えます。情感豊かな傑作です。この作品の出品を契機に「花鳥画の芳文」と呼ばれるようになったそうです。
(菊池芳文《春の夕・霜の朝》)
感想②「梥本一洋」
この展覧会では、梥本一洋の作品が2点展示されていました。第9回帝展に出品された《餞春》と第10回文展に出品された《送り火》です。
《餞春》では、扇子で拍子をとりながら唄の稽古に励んでいる舞妓の様子が描かれています。一方、背景には日本庭園が大和絵風に描かれています。舞妓の朱の着物と日本庭園の池の青色が対置され、ダイナミックな表現になっています。
《送り火》では、3人の着物を着た女性が送り火をしている様子が描かれています。背景には現実にはあり得ない大きな満月が描かれ、作品の構図バランスを保っています。
感想③「池田遙邨《南禅寺》」
池田遙邨《南禅寺》は、この展覧会のテーマ「絵になる京都」を代表するような作品ですね。タイトル通り、南禅寺を描いていますが、まるでドローンで上空から南禅寺を眺めたような構図になっています。
大和絵風のメリハリの利いた彩色が施され、参拝者などが小さく描き込まれています。かなり精緻に描かれていて、背後には山々も見えます。周囲に漂う水色の雲海が幻想的な演出になっています。
感想メモ
京都文化博物館で開催されていた「没後70年 梥本一洋」のギャラリートークで、学芸員の方から京都市京セラ美術館のコレクションルームでも梥本一洋の作品が展示されています、との案内がありましたので楽しみにしながらやってきました。
こうした美術館同士の連携もなかなか良いですね。今回は、たまたまギャラリートークのような学芸員の話を聞ける機会があったので分かりましたが、普通ではなかなか分からない情報ですね。
今後は、美術館に来られた鑑賞者に他の展覧会チラシだけでなく、他の美術館で開催されている展覧会の見所やポイントが簡単に分かる案内もあれば良いですね。互いの美術館を応援し合うことで、すべての美術館が活気づくことを願っています。
[2022 春期]コレクションルーム
会期:2022年4月29日(金・祝)~7月10日(日)(土)
休館日:月曜日 *祝日の場合は開館
観覧料:730円(京都市外在住の方)
音声ガイド:500円
写真撮影:1点のみ可能
関連図録:京都市美術館名品百選(PR)
Web:京都市京セラ美術館「[2022 春期]コレクションルーム」