【感想】「展覧会 岡本太郎」(大阪中之島美術館、会期:2022/7/23~10/2)レビュー

展覧会の概要

大阪中之島美術館で開催されている「展覧会 岡本太郎」(会期:2022年7月23日~10月2日)に行ってきました。この展覧会は、1970年に開催された大阪万博のテーマ館《太陽の塔》で知られる岡本太郎(1911-1996)の芸術人生を振り返る内容となっています。

大阪中之島美術館「展覧会 岡本太郎」大阪中之島美術館「展覧会 岡本太郎」

 

展覧会の構成

第1章 岡本太郎誕生――パリ時代
第2章 創造の孤独――日本の文化を挑発する
第3章 人間の根源――呪力の魅惑
第4章 大衆の中の芸術
第5章 ふたつの太陽――《太陽の塔》と《明日の神話》
第6章 黒い眼の深淵――つき抜けた孤独

 

感想①「岡本太郎の芸術」

岡本太郎がパリ時代に制作し日本に持ち帰った作品は全て戦火で焼失したとされています。そうした作品の中から後年に再制作された4点《痛ましき腕》《露店》《空間》《コントルポアン》も展示されていました。

 

《痛ましき腕》では、大きな赤いリボンと、皮膚が規則的に剥がされた腕が印象的です。苦悩する当時の岡本太郎の思いが凝縮された作品で、この後に展開する岡本太郎芸術を予感させる、不思議な世界観を持っています。

岡本太郎《痛ましき腕》

(岡本太郎《痛ましき腕》)

 

そして、「対極主義」の芸術観の下に合理主義と非合理主義を際立たせていく作品が続々と登場します。これでもか、という感じで岡本太郎の世界が続きます。独特の構成要素と色使いが強烈で、見続けているとクラクラしそうになります。まさに「芸術は爆発だ。」の世界が展開していました。

 

感想②「大衆芸術の魅力」

そんな岡本太郎は大衆向けの作品も数多く制作しています。展示会場では、こうした作品群を集めてコーナーが創られていましたが、楽しくてオシャレな空間が出来上がっていました。

大阪中之島美術館「展覧会 岡本太郎」

 

岡本太郎は自分の作品が公開されなくなることを避けるために、あえてほとんどの作品を売らなかったと言います。そして、芸術は大衆に広く共有されるべきものだと考えていた彼は、パブリックアートにも熱心に取り組んでいました。

 

そうした延長線上に大阪万博の《太陽の塔》や、メキシコのホテルに依頼されて制作した幅30メートルにも及ぶ巨大壁画《明日の神話》があります。大阪万博では、テーマ館の合理的な近代建築に対決するため、あえて非合理的な存在として《太陽の塔》を生み出したと言いますから面白いですね。

 

感想③「立体作品の魅力」

展覧会を通して、岡本太郎の立体作品の魅力を再発見しました。今回は、陶芸作品も幾つか展示されていました。草月流の華道家・勅使河原蒼風との対談をきっかけに制作された《顔》もありましたが、当時、この作品に枯れ木やストッキングを活けるという奇想天外な展示を行っていたようです。

 

《座ることを拒否する椅子》では、実際に座ることもできました。その名の通り、凹凸のある座面は座ることを拒否しているようです。他にも、FRP製の《愛》《光る彫刻》《河童像》《樹霊Ⅱ》《縄文人》といったユニークな作品も楽しめました。一方、久国寺から依頼されて制作されたというブロンズ製の鐘《梵鐘・歓喜》もありました。

岡本太郎《座ることを拒否する椅子》

(岡本太郎《座ることを拒否する椅子》)

 

感想メモ

この展覧会は、写真撮影が可能になっていました。ただ、鑑賞者が多いのでなかなか写真を撮るタイミングが難しいですね。一通り鑑賞し終えてから、空いている場所を探しつつ撮影するのが良いかもしれません。

 

もっとも、初めから写真撮影は諦めて図録を購入するというのも一つの選択です。岡本太郎の作品のほぼすべてを所蔵している川崎市岡本太郎美術館と岡本太郎記念館が主催した展覧会ですので、最初期から晩年までの代表作や重要作が網羅された図録になっています。この展覧会は、没後開催された回顧展のなかで最大規模となるようですね。

 

展覧会情報

展覧会 岡本太郎

会場:大阪中之島美術館
会期:2022年7月23日(土) ~ 10月2日(日)
休館日:月曜日休館(9/19を除く)
観覧料:1,800円(一般)
音声ガイド:600円(俳優:阿部サダヲ)
写真撮影:可能
図録:2,800円
Web:大阪中之島美術館「展覧会 岡本太郎」
特設サイト:「展覧会 岡本太郎」
2022年09月18日|ブログのカテゴリー:2022年投稿, 展覧会レビュー