展覧会の概要
京都市京セラ美術館で開催されている[2022 夏期]コレクションルーム 特集「幻想の系譜―西洋版画コレクションと近代京都の洋画」(会期:2022年7月16日~9月25日)に行ってきました。
昨年、当美術館では西洋美術の個人コレクションの一括寄贈を受けています。そこで、このコレクション展では特集として、象徴主義を含む世紀末芸術、シュルレアリスム、ウィーン幻想派に属する作品群が紹介されています。
展覧会の構成
夏の名品
海辺の暮らし
近代西洋版画への誘い―THE ZERO COLLECTIONより
■ 18世紀:近代版画の幕開け
■ 19世紀:生活の中の版画
■ 20世紀:芸術としての版画
幻想の系譜1 象徴主義 シュルレアリスム ウィーン幻想派 ― THE ZERO COLLECTIONより
■ 象徴主義
■ シュルレアリスム
■ ウィーン幻想派
幻想の系譜 2 北脇 昇・小牧源太郎・今井 憲一
■ 北脇 昇
■小牧源太郎
■ 今井憲一
清水六兵衞 創造のあゆみ
感想①「夏の名品」
ここでは夏の名品として、秋野不矩《砂上》と中村研一《瀬戸内海》の二つが展示されていました。秋野不矩《砂上》は、全裸の子どもたちと半裸の母親が海岸で遊んでいます。中村研一《瀬戸内海》では、三人の女性が海辺で寛いでいますが、そのうちの一人はなぜか全裸です。
絵画のためのシチュエーションなのか、そうした時代風習なのかよく分かりませんが、不思議な光景です。しかし夏を強調していることだけは間違いないでしょう。そんな名品でした。
感想②「近代西洋版画の世界」
京都市京セラ美術館では、2021年度に「THE ZERO COLLECTION」と呼ばれる西洋版画を中心とした作品が一括寄贈されました。展示会場では、18世紀のホガースやゴヤ、19世紀のドーミエ、ロートレック、20世紀のルオー、マティス、ピカソなど、年代を追いながら近代西洋版画を鑑賞できました。
一方、幻想の系譜として、象徴主義、シュルレアリスム、ウィーン幻想派に分けて、それぞれを代表する作家たちの作品が展示されていました。版画ならではの魅力があって神秘的な雰囲気を楽しめました。
感想③「北脇昇・小牧源太郎・今井憲一」
京都で活躍したシュルレアリスム系の画家たちの作品も展示されていました。今回は、北脇昇・小牧源太郎・今井憲一の作品限定で写真撮影も可能です。
北脇昇《朱と紫》では、漢字-色相図-幾何学図形-冬枯れの風景画と、朱と紫をテーマにした四つの表現が観られます。風景画では、真っ赤(朱)に染まった太陽が紫色に変色した山の中に沈もうとしています。虹では両端に位置する朱と紫ですが、このふたつが今にも融合するかのようですね。
(北脇昇《朱と紫》)
感想メモ
展示室で「版画の種類と技法」という簡単な解説ペーパーが配布されていました。意外と分かりにくいのが、版画の種類と技法に関する名称ですね。ここでは、非常に簡潔にまとめられていて、用語の理解が進みました。
凸版、凹版、平板、孔版、それぞれの特徴と代表的な技法が記載されていました。こうした基本的なことを知っていますと、キャプション表記を見て、それがどんな技法を用いた版画なのか理解できますね。
展覧会情報
[2022 夏期]コレクションルーム
会期:2022年7月16日(土)~9月25日(日)
休館日:月曜日 *祝日の場合は開館
観覧料:730円(京都市外在住の方)
音声ガイド:500円
写真撮影:一部可能
関連図録:京都市美術館名品百選(PR)
Web:京都市京セラ美術館「[2022 夏期]コレクションルーム」