展覧会の概要
福田美術館で開催されている「開館3周年記念 福美の名品展 〜まだまだあります未公開作品」(会期:2022年7月16日~10月10日)に行ってきました。この展覧会では、福田美術館が誇る名品と共に、これまで公開されたことがない近代絵画を中心とした秘蔵コレクションが展示されています。
覧会の構成
第1展示室 東西の第一線で活躍した近代画家たちによる名品
第2展示室 国画創作協会を設立した画家たちや鏑木清方などの未公開作品
パノラマギャラリー 加山又造コレクション
感想①「第1展示室」
普段見慣れた軸装作品と共に、この展示室では見慣れない額装作品が並んでいました。杉山寧、秋野不矩、東山魁夷、髙山辰雄たちの作品が新鮮です。作品全体の統一感はありませんが、福美コレクションの特徴を垣間見られる内容です。
若き日の杉山寧が描いた記念碑的な作品《慈悲光》がありましたが、これは奈良の室生寺に取材した作品で、その後の画業にも大きな影響を与えたと言います。さらに、《静物》《花》といった作品では、心地よい画面の質感と色彩が見事でした。
(杉山寧《花》)
他にも、東山魁夷の“道”や“水鏡”をテーマにした作品、生涯に10回インドを訪れたという秋野不矩がインドの景観を描いた作品、独特の世界観が不思議な印象を与えてくれる髙山辰雄の作品なども楽しめました。
感想②「第2展示室」
ここでは、文展への不満を機に「国画創作協会」を創立した京都画壇の小野竹喬、土田麦僊、村上華岳、野長瀬晩花、榊原紫峰、そして、後に参加した入江波光たちの作品が勢揃いしていました。
小野竹喬の20代の作品《河口近く》が展示されていましたが、既にその色使いや画風に、その後の竹喬を思わせる優しい魅力が溢れています。一方、野長瀬晩花の《初夏の奈良》や《樹下栗鼠図屏風》では、風景のなかに佇んでいる動物たちの姿が何とも愛らしく、子ども時代の無邪気な気持ちが甦ってくるようです。
入江波光に関しては、国画会時代に描いた作品と共に、国画会解散後に描いた仏画もありました。古画の研究に熱中していた彼が模写した《聖観音》、《文殊尊》には、彼の心境が現れているような気がします。
(入江波光《聖観音》)
感想③「加山又造」
パノラマギャラリーは、加山又造コレクションの紹介となっていました。10年ごとに画風を変えたと言われる加山又造(1927-2004)の時々の魅力が堪能できる内容でした。
焼き物の質感を取り入れたという《荒野の朝》は、確かに陶磁器の奥深さを抽出したような画風で、実に面白い試みですね。ガラス容器に入ったブドウを描いた《静物》では、青と赤の鮮烈な組み合わせが実に神秘的で発光しているようにも見えます。
《猫ト牡丹》には、ブルーの目をした猫・ヒマラヤンと、白と赤の花弁が大きく開いた牡丹が豪華に対置されています。静寂のなかで独特の高級感が広がっていて、吉祥的なモチーフが印象的な作品でした。他にも、雪山を描いた作品など、加山又造が描く自然も味わえます。
感想メモ
京都・嵐山も観光客が増え始めて、少しずつ活気が戻ってきつつあるようです。特に、嵐山の夕刻は何とも言えない風情がありますね。まだ、海外の方はほとんど見かけませんが、今しばらくは、ある意味で貴重な日本人だけが登場する嵐山を体験できそうです。
開館3周年記念 福美の名品展
会期:2022年7月16日(土)~ 10月10日(月・祝)
休館日:火曜
観覧料:1,300円(一般)
音声ガイド:無料(スマホアプリ利用)
写真撮影:一部を除いて可能
図録:なし
Web:福田美術館「開館3周年記念 福美の名品展」