【感想】「美人画開花 培広庵コレクション展」(植野記念美術館、会期:2022/9/17~11/6)レビュー

展覧会の概要

植野記念美術館で開催されている「美人画開花 培広庵コレクション展」(会期:2022年9月17日~11月6日)に行ってきました。

 

この展覧会では、培広庵(ばいこうあん)氏が親子二代にわたって蒐集してきた近代の美人画コレクションから76点が展示されています。さらに、特別出品として丹波市出身の山本茂斗萌(やまもと もとめ、1902-1985)の作品も5点展示されています。

植野記念美術館「美人画開花 培広庵コレクション展」植野記念美術館「美人画開花 培広庵コレクション展」

 

展覧会の構成

第1章 近代美人画の曙
特別出品 丹波市在住作家による美人画
第2章 都市と画檀
第3章 四季と美人画
第4章 国画創作協会
第5章 美人画の系譜

 

感想①「紺谷光俊」

この展覧会では、三都三園と呼ばれた、上村松園、島成園、池田蕉園をはじめとして、鏑木清方、伊東深水、北野恒富、伊藤小坡など、美人画の名手たちによる作品が勢揃いしています。

 

一方で、普段あまり目にしない作家たちの美人画にも多数出会えました。そんな中で、紺谷光俊(こんたに こうしゅん、1890-1945)の作品が印象に残りました。《更衣》という作品では、糸巻きと遊ぶ子猫と一緒に美女が描かれていますが、淡い色彩が絶妙です。

 

他にも、水墨画風の背景を取り込んだ大首絵《夕涼》や、竹久夢二風の美人画《手鏡》など、多様な画風が楽しめ、それぞれにどこか心惹かれるものがありました。

 

感想②「山川秀峰《阿倍野》」

山川秀峰の作品も数点展示されていましたが、浄瑠璃「芦屋道満大内鑑」に取材した二曲一双の屏風《阿倍野》は、圧巻でしたね。秋の野に鋭い眼光を放つ白狐二匹と、葛の葉姫に化けた狐の存在感が見事です。

 

葛の葉伝説で、安倍晴明の母親と言われたのがこの狐ですね。安倍保名は、狐狩りの際に一匹の白狐を助けます。白狐はその時の恩返しとして、遠く離れてしまった妻・葛の葉姫に化けて安倍保名のもとに現れます。やがて二人の間に子どもが生まれ、それが安倍晴明というわけです。

 

感想③「堂本印象《研遊帖》」

展示会場には、堂本印象が藤原時代から徳川文政時代までの女性の風俗を描いた作品《研遊帖》も展示されていました。なかなか面白い作品で、その時代の女性の姿が特徴的に描かれていました。

 

《睦月 藤原時代》から始まり、《如月 足利時代》《弥生 豊臣桃山時代》といった具合に、旧暦の各月に合わせて当時の風俗が窺えるような美人画になっています。

 

感想メモ

培広庵コレクションは、明治から昭和にかけて活躍した日本画家による作品約130点から構成されていますが、今回はそのなかから76点が展示されていました。尚、販売されていた図録『美人画の雪月花』には、詳しい解説とともに130点の作品が収載されていますので、その全貌を楽しめます。

 

展覧会情報

美人画開花

会場:植野記念美術館
会期:2022年9月17日(土)~ 11月6日(日)
休館日:月曜日(但し、9月19日[月・祝]10月10日[月・祝]は開館、翌火曜が休館)
観覧料:600円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:不可
図録:2,200円
Web:植野記念美術館「美人画開花 培広庵コレクション展」
2022年11月04日|ブログのカテゴリー:2022年投稿, 展覧会レビュー