【書評】図録『抽象世界 Abstraction:Aspects of Contemporary Art』のご紹介!

国立国際美術館で開催されている「抽象世界 Abstraction:Aspects of Contemporary Art」(会期:2019年5月25日~8月4日)の図録をご紹介します。現代美術らしく、蛍光色を使った派手な色使いのカバーとなっています。

 

個々の作品についての解説はなく、最後にまとめて展示作品を手掛けた作家たちの紹介を兼ねた解説がついています。全部で104ページの簡便な作りになっており、価格は1,300円でした。

図録『抽象世界 Abstraction:Aspects of Contemporary Art』

 

<目次>

図版


盛衰の抽象、発見の芸術 中西博之

エルズワース・ケリー
ラウル・デ・カイザー
ダーン・ファン・ゴールデン
フランツ・ヴェスト
ジョン・アムレーダー
ギュンター・フォルグ
ミハエル・クレバー
クリストファー・ウール
ハイモ・ツォーベルニク
ウーゴ・ロンディノーネ
トマ・アブツ
スターリング・ルビー
リチャード・オードリッチ

出品作品リスト
謝辞

 

国立国際美術館の主任研究員である中西博之氏による論稿「盛衰の抽象、発見の芸術」では、今回の展覧会を開催するに至った経緯や、抽象芸術に関する解説がなされています。

 

「抽象芸術とは究極的には可能性を見つける営為であるが故に、新鮮でしかも驚きに満ちた感興をもたらしうるし、人によっては理解の難しさを感じるのかもしれない」と書かれているように、抽象芸術とは、まさにそうした可能性を追求する芸術なのでしょう。

 

そして、抽象芸術の基本的特質として以下の二点が挙げられています。ひとつは、抽象芸術の内容は主題や物語にあるのではない、ということ。そして、もう一つは、抽象芸術は過去の抽象芸術を検討し直す行為であるとともに、制作に使用する絵具などあらゆる物質的なものの可能性を探求する作業である、ということです。

 

非常に理解するのが困難な抽象芸術ですが、この論稿を読むと何となく分かったような気がしてしまいます。といっても、簡単にスパッとわかるような単純な内容ではありませんが…。

 

2019年07月31日