展覧会の概要
堂本印象美術館で開催されている「山口華楊 ―いのちに心をよせて―」(会期:2022年10月8日~11月23日)に行ってきました。この展覧会では、動物画や花鳥画で活躍した日本画家・山口華楊(1899-1984)の代表作を展望することができます。
展覧会の構成
初期の作品から晩年の作品まで、特に展示構成を決めずに展示されていました。
感想①「背景の美しさ」
この展覧会は、通路沿いに展示された晩年の花鳥画や動物画から始まりますが、モチーフとなる動物や花鳥の表現が美しいだけで無く、その背景の美しさに驚きました。
モチーフに調和する絶妙な配色と揺らぎが見事で、メインとなる動物や花鳥がより際だって観えてきます。三匹の狐を描いた《月夜野》では、その画稿も展示されていましたが、背景にも細かなこだわりを持って表現されていることがよく分かります。
感想②「詩情を感じる」
作品から、その画家の人格や人生観が溢れ出てくることがよくありますが、山口華楊の作品には特にその傾向が強いように感じました。とにかく、観ていて心が洗われるようで、次第に自分の心が和らいで行くのが実感できました。
動物にしても植物にしても、作品から透明な優しさが溢れていて、詩情さえ感じさせる作品に仕上がっていました。
「花でも動物でも、その中の生きた生命を見い出したい。借りものでなく自分の眼でみた、生きた気持ちを出したい。私が念願しているのはそのことだけだ」という本人の言葉を裏付けるような作品群でしたね。
感想③「黒豹」
山口華楊の出世作とも言える《黒豹》も展示されていましたが、黒豹の凜々しい表情と構図は見事でした。しかし、この作品を制作するに当たって努力されてきた過程を知りますと、成功すべくして成功されたようにも思えます。
東京、名古屋、大阪、神戸の動物園を回って、お気に入りの黒豹を大阪で見つけてからは、京都から大阪に半月間毎日かよってぶっ通しで写生されたそうです。さらに、構図を決めるに際しては、粘土で模型を作ってまでして考えています。
さらに、地の色をどうするかでもかなり試行錯誤されたようです。一瞬のひらめきで偶然に出来上がった作品ではなく、その背後には絶え間ない努力が込められた作品だったようです。
感想メモ
山口華楊は西村五雲に絵を学んでいますが、初期の《猿猴》等を見ていますと、やはり西村五雲風の見事な写実性が見て取れます。しかし、その後は山口華楊独自の境地へと飛躍していますね。
堂本印象美術館の近くには、あの有名な金閣寺があります。今回は、ついでに金閣寺にも行ってきました。海外からの旅行客も大分増えてきましたね。日本語以外の言語も大分飛び交っていました。
(金閣寺(臨済宗相国寺派鹿苑寺 舎利殿「金閣」))
展覧会情報
山口華楊 ―いのちに心をよせて―
会期:2022年10月8日(土)~ 11月23日(水・祝)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日休館)
観覧料:510円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:不可
図録:1,500円
Web:堂本印象美術館「山口華楊 ―いのちに心をよせて―」