丹波市立植野記念美術館で開催されている「三代目 磯尾柏里 彫刻展 - 明日を見つめて -」(会期:2019年7月20日~8月25日)に行ってきました。本年還暦を迎えられた磯尾柏里氏は、旧氷上郡柏原市(現丹波市)出身の彫刻家で、祖父・父に続く三代目の磯尾柏里を襲名しています。
今回の展覧会では、三代目 磯尾柏里氏の作品だけでなく、初代、二代目の作品も一部展示されていました。三代目 磯尾柏里氏の作品は、人物塑造(特に女性の裸体像)が中心で、静的で穏やかな作品に仕上がっています。といっても、それらの作品からは静かながらも凛とした意思が感じられ、ずっと眺めていたくなるような不思議な魅力を持っていました。
解説パネルには、三代目 磯尾柏里氏の言葉として「ただ立ったり座ったりのポーズの中に、深い精神性を湛えた作品を造りたい。一生の目標です。」と記されていましたが、その言葉を反映した作品になっているように思います。
個人的には、女性が座って足を折り曲げた「想」シリーズの作品が気に入りました。全体的に、モデルの体型を極端に理想化することなく素直に表現しています。また、顔の造りも癖がなくとても好感が持てる表情をしています。
今回の展示では、さわれる体験コーナーがあり、三代目磯尾柏里「二十歳~揺れる想い」と2代目磯尾柏里「憤」の2点に関しては、実際にさわれるようになっていました。FRP(繊維強化プラスチック)特有の肌触りで、表面の凹凸が特徴的でした。
一方、初代磯尾柏里の作品は、5点のみの展示でしたが、木彫で非常に魂のこもった気迫のある作品でした。三代目の「静」に対し、初代は「動」という感じでしょうか。単なる精神性を超えて、宗教性が感じられる崇高な雰囲気がありました。
2代目磯尾柏里の作品は、牛の塑造が特徴で8点の作品が展示されていました。同じ磯尾柏里を襲名しても、それぞれが全く異なる作品傾向になっているところが興味深いですね。