【感想】「神戸の暮らしを“デザイン”する」展(神戸市立小磯記念美術館、2019/7/13~9/1)レビュー

神戸市立小磯記念美術館で開催されている、夏休み特別企画「神戸の暮らしを“デザイン”する」展(会期:2019年7月13日~9月1日)に行ってきました。今回は、同時に「小磯良平作品選Ⅱ 特集:座る―小磯良平のプライベート空間―」も開催されています。

神戸市立小磯記念美術館「神戸の暮らしを“デザイン”する」展

 

「神戸の暮らしを“デザイン”する」展は、小磯良平のグラフィックアート作家としての仕事に焦点を当てた内容になっています。そして、小磯良平の作品だけでなく、当時の神戸の様子がわかる様々な資料や映像も公開されていました。展示内容は大きく次の3つに分かれています。

 

1.In those days! あのころ―戦前の神戸とグラフィックデザイン

 

ここでは、戦前の神戸の様子が写真や冊子、映像を通して垣間見れるように工夫されていました。小磯良平が原画を手掛けた「第1回神戸みなとの祭ポスター」や「第2回神戸みなとの祭ポスター」も展示されています。他にも、小磯良平原画の「10月2日大丸の全館完成ポスター」や今竹七郎原画の「第55回夏の百選回ポスター」なども観ることができます。さらに、会場の一角では、「昭和八年十一月 みなとの祭 ニュース映画」(中島映画製作所、12分)の映像が流れていました。当時の華やかな祭りの雰囲気がよく分かる映像になっていましたが、ここに写っている方々の大部分は、もう地上に生きていないんだと思うと、なんとも言えない感傷的な気持ちになりました。

 

2.For the future! これから―戦後復興と神戸博を中心に

 

ここでは、小磯良平が戦後に手掛けたポスターを中心に展示されていました。幻となった「広島平和祭ポスター」を初め、「関西学院グリークラブリサイタルポスター」、「神戸博ポスター」など、小磯良平が自身を取り巻く人々と様々に関わり合いながら仕事をしていたことがよくわかります。

 

3.Ever now! いつまでも―神戸に残る小磯芸術

 

ここでは、頌栄短期大学ハウ記念館に現在も設置されているステンドグラスの原画<幼な子イエスとヨハネ>が展示されていました。これは、小磯良平にとって初挑戦となるステンドグラス原画です。また、クリスチャンで長年の友人である田中忠雄の作品も展示されていました。他にも、小磯良平が手掛けた緞帳原画や写真パネルも幾つか展示されています。

 

今回の展覧会は、通常の美術展とは一風異なり、神戸という町とそれに関わってきた小磯良平を初めとする様々な人々の息遣いが感じられる展覧会になっていました。展示作品の合間に設置されている、小磯良平や竹中郁たちの言葉を記したパネルも、何気に親しみやすい雰囲気を醸し出していました。

 

2019年08月07日|ブログのカテゴリー:2019年投稿, 展覧会レビュー