【感想】「ヒグチユウコ展 CIRCUS」(神戸ゆかりの美術館、2019/6/15~9/1)レビュー

神戸ゆかりの美術館で開催されている「ヒグチユウコ展 CIRCUS」に行ってきました。この展覧会は女性人気がかなり高くて混雑が予想されたので、平日(火曜日)を選んで鑑賞することにしました。

神戸ゆかりの美術館「ヒグチユウコ展 CIRCUS」神戸ゆかりの美術館「ヒグチユウコ展 CIRCUS」

 

当日はそれなりの来館者はいましたが、混雑して鑑賞に困るということはありませんでした。ただし、来館者の9割は女性でした。今回は、展示順に鑑賞していくというより、前に人がいない作品を優先して鑑賞していく方法をとり、最終的にはすべての作品をしっかりと観ることができました。

 

既に行った方の展覧会レビューを読んでいても、撮影が許可されている入口前と出口後の写真は大量に掲載されてはいるものの、会場内の様子がほとんど分からなかったので、どうやって700点以上もの作品を展示しているのか気になっていました。なので、今回のレビューではそのあたりの様子も分かるように紹介したいと思います。ただし、この展覧会では作品リストが配布されていないので、館内で記録したメモだけが頼りになります。

 

第1室では、ヒグチユウコさんがこれまでに出版した絵本の原画を中心に展示していました。『ふたりのねこ』(2014年)、『せかいいちのねこ』(2015年)、『いらないねこ』(2017年)、『ほんやのねこ』(2018年)、『すきになったら』(2016年)、『御伽草子 うらしま』(2015年)の原画が額装されて壁に展示されている一方で、中央のガラスのショーケースにも原画がまとめて展示されていました。個々の原画は、一部を除いてナンバリングも作品名も記載されていない作品が大部分でした。大型の作品としては、非常に綿密に描かれた「ワニ」と「にひきのこねこ」が壁に展示されていました。

 

第1室から第2室へ移動する途中に、和室コーナーがあり、そこには屏風作品や掛け軸、伊藤若冲の作品をオマージュした「ギュスターヴ若沖雄鶏図」や「空飛ぶGUSTAVEくん」、俵屋宗達の『風神雷神図』をオマージュした「猫風神雷神図」などが展示されていました。このコーナーは極めて狭いスペースにも関わらず、監視員が近くにいつも控えていたので、かなり貴重な作品が展示されていたと思われます。

 

そして、和室コーナーの向かいには、ヒグチユウコさんの初期作品が並んでいました。女性を抽象的に描いた美しい作品や色鮮やかな抽象作品など、現代アートに取り組まれていた様子がよくわかります。他にも、女性の裸体を描いたデッサンも数点展示されていました。このコーナーを目にして「今日は美術館の展覧会に来ていたんだ」とふと思い出しました。

 

続く第2室は大きく2つに区切られており、入り口手前の部屋には、ヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲルの作品をオマージュした『BABEL Higuchi Yuko Artworks』の原画が展示されていました。これまでヒグチユウコさんについてはほとんど知識がなかったのですが、その画風からヒエロニムス・ボス風のキャラクターが多いなという印象がしていました。やはり本人もそうした作品が好きだったようですね。他にも、この部屋には、様々な映画のポスター原画や、Ghostシリーズ、蝙蝠、鋏、真珠、死神、アナトミカル・ヴィーナス、視点B、視点右、視点左、オフェーリア(2015年)、Alice(2012年)など、よく見かける作品が目白押しでした。他にも、服を着たトルソ(人体の胴体模型)が展示されていました。

 

第2室の奥の部屋には、双子(2018年)、CIRCUS(2018年)、黒色すみれ(2018年)、CIRCUSシリーズ、Alice(2010年)、インセクト(2018年)、女(2013年)、猫婦人(2013年)、『ギュスターヴくん』シリーズなど、代表作が並んでいました。さらに、この部屋の中央には、ぬいぐるみ作家の今井昌代さんのぬいぐるみ作品が大きく展示されており、ヒグチユウコさんとのコラボ作品『カカオカー・レーシング Imai Masayo Artworks』の原画もありました。奥にはイスも展示されていました。今回の展覧会のメイン会場はこの展示室2の二部屋になるでしょう。

 

最後の第3室では、ヒグチユウコさんの最新作品が紹介されていました。「きのこ会議」(2018年)と「卑怯な蝙蝠」(2018年)に関しては、数枚のパネルでストーリーが分かるように展示されていました。他にも、『ヒグチユウコ画集』の原画や書籍の装画、EVsイラストなども展示され、中央のショーケースには、「博物蒐集家の応接間」と題した作品がまとめて展示されていました。壁には、巨大な「双子」の垂れ幕もありました。

 

出口をくぐると、数台の丸テーブルにヒグチユウコさんの絵本が置かれており、自由に閲覧できるようになっていました。他にも、ガチャのコーナー、写真が撮れるコーナーなどもありました。ミュージアムショップでは、様々なグッズやポストカード、限定画集、書籍などが所狭しと並べられていました。購入時には、チケットの半券を提示してスタンプが押してもらう必要があります。これは混雑時用の対策で、1枚のチケットに付き1回のみ会計ができるシステムになっていました。

 

全体的に観て、女性人気の高いヒグチユウコさんの展覧会らしく、至るところに女性向けの演出がなされていました。最近は、絵本やアニメをテーマにした展覧会がかなり増えてきており、従来の美術館ファンとは異なる層の方に来館してもらおうと、美術館サイドもあれこれと工夫しているようです。こうした企画を通して、美術館に足を運ぶ敷居が少しでも低くなれば良いですね。

<ヒグチユウコ画集>

日本のみならず世界から注目されている画家・ヒグチユウコの最新画集。渾身の作品を224ページという大ボリュームで掲載し、更に本書のための描き下ろし作品16ページ(「卑怯な蝙蝠」)も掲載されたファン垂涎・必携の一冊です。(アマゾンの内容紹介より)



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2019年08月08日|ブログのカテゴリー:2019年投稿, 展覧会レビュー