【感想】「絵画と社会 ~神戸の行動美術、各人の道~」(神戸ゆかりの美術館、2019/4/13~6/2)レビュー

小磯記念美術館と同じく、六甲アイランド内に位置する神戸ゆかりの美術館は、神戸ファッション美術館内の1Fにあります。

神戸ゆかりの美術館「絵画と社会 ~神戸の行動美術、各人の道~」神戸ゆかりの美術館「絵画と社会 ~神戸の行動美術、各人の道~」

 

今回は、この神戸ゆかりの美術館で開催されている企画展「絵画と社会 ~神戸の行動美術、各人の道~」を鑑賞してきました。開催期間の最終日に行ったので、このブログを読んで観たかったな…と思われた方には申し訳ないのですが、今後の美術館巡りの参考にして頂ければ幸いです。

 

さて、今回の企画展「絵画と社会」では、美術館が所蔵しているコレクションから、行動展へ出品した神戸ゆかりの画家たちの作品が展示されていました。行動展というのは、1944年に一旦解散した旧二科会が、従来の体制のままで再建されることに反対した画家たちによって1945年に設立された美術団体「行動美術協会」が開催している公募展のことです。行動美術協会は、旧態然とした美術団体ではなく、新しい時代に適合した団体をめざして結成されました。

 

今回、展示されているのは、古家新(ふるや しん、1897~1977)、田中忠雄(たなか ただお、1903~95)、小出卓二(こいで たくじ、1903~78)、南和好(みなみ かずよし、1932~2014)、貝原六一(かいばら ろくいち、1924~2004)、田中徳喜(たなか とくき、1931~2014)、中右瑛(なかう えい、1934~)、松本宏(まつもと ひろし、1934~2015)、川西英(かわにし ひで、1894~1965)の9名の作品です。

 

なかでも今回、特に印象に残ったのが、田中忠雄・小出卓二・南和好・貝原六一の4名の作品でした。牧師の息子として生まれた田中忠雄の宗教作品は、ジョルジュ・ルオーを彷彿させるような画風で、「みくにを来たらせ給え」では教会の参列者たちの敬虔な姿が美しく描かれています。また、展覧会チラシの表紙を飾っている「モーセ十戒を示す」では、黄色を背景に赤や青を組み合わせた鮮やかな色彩が魅力的でした。

 

次に、風景画を描いた小出卓二の作品は、神戸港や瀬戸内海の夜景などを強烈な赤を用いて描いています。とても印象的な作品群でした。続く南和好は加古川出身の画家ですが、この方の描く作品は、ミラノなどの建物を背景に裸の女性群像が描かれており、独特の感覚で観るものに迫ってきます。

 

田中徳喜と中右瑛が師事していた貝原六一の作品も何とも言えない魅力を感じました。特に、ドン・キホーテ・シリーズの作品は、滑稽な姿と真剣な生き様が交錯した人生の悲哀のようなものを感じさせる魅力的な作品でした。

 

今回の展覧会は、私にとっても初めて観る作品ばかりでしたが、こうして心を揺さぶられる絵画に出会えることは、改めて幸せなことだと思います。こうした感動が心に少しずつ蓄積されることで、自分自身の心の領域が少しずつ広がっていくような心地よい感覚を覚えました。

 

2019年06月05日|ブログのカテゴリー:2019年投稿, 展覧会レビュー