兵庫県立美術館で開催されている「集めた!日本の前衛―山村徳太郎の眼 山村コレクション展」と同時開催されている「2019年度 コレクション展Ⅱ」(会期:2019年7月6日~11月10日)も鑑賞してきました。内容は、特集1「けんび八景 ―新収蔵作品紹介―」、特集2「没後80年 村上華岳」、小企画「美術の中のかたち―手で見る造形 八田豊展―流れに触れる」の3部構成となっています。
特集1「けんび八景 ―新収蔵作品紹介―」は、兵庫県立美術館のコレクションを2018年度に新たに収蔵された作品を交えて紹介する企画になっています。「けんび」というのは「兵庫県立美術館」の略称で、「八景」は、優れた八つの景色という意味です。中国の伝統的な山水画の画題である「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」などが有名ですね。
今回の特集1では、以下の八景になっていました。
第一景 菅井汲 生誕100年!
第二景 50年代の地平―制作者集団「極」
第三景 かわいい版画
第四景 瓶花の魅力
第五景 1920~30年代の絵画―青山熊治と小出楢重
第六景 具体の作家たち
第七景 流氓ユダヤ
第八景 空間の中のかたち
新収蔵作品は、第一景の菅井汲《空の怒り》、第二景の小林二郎《生》《剥脱(E)》、第三景の恩地孝四郎《壺》、渡辺千尋《長崎情景(殉教の丘から)》、第四景の亀高文子《菊》、第五景の青山熊治《森の風景》《春生像》、神原浩《風景》、小出楢重《裸女》、第八景の大西伸明《kyatatsu》《Koppu》、イサム・ノグチ《小さなイド》となっています。
作品リストを見ると、そのうち、美術館の購入作品は恩地孝四郎《壺》、大西伸明《kyatatsu》、イサム・ノグチ《小さなイド》の3点のようです。大西伸明の《kyatatsu》という作品は、一見普通の使い古した脚立にしか見えませんが、よく見ると下部だけ塗装をせずに白色の樹脂が露出しており、この作品が樹脂に塗装した作品だということが分かるようになっています。見事としか言いようがありません。他に、日本人による裸婦像を確立したとされる小出楢重の《裸女》も魅力的な作品でした。
特集2の「没後80年 村上華岳」は、没後80年を迎えた村上華岳の特集となります。村上華岳は大阪府出身で、後半生は神戸で作品制作を行っていた日本画家です。仏画や風景画を得意とした画家で、独特のタッチで描かれた画風が印象的でした。こちらは、前期と後期で展示内容が変わるようなので、再度見に来たいですね。
小企画「美術の中のかたち―手で見る造形 八田豊展―流れに触れる」は、兵庫県立美術館で1989年から続けている「作品に触って鑑賞できる展覧会シリーズ」になります。八田豊さんはもともと画家で、視力が低下し始めてからは、楮(こうぞ)や和紙を使った作品を制作されています。目で見ただけでも美しい芸術作品となっていますが、やはりこれらの作品は触覚で感じ取る作品なので、実際に触ってみて始めて作家と同じ世界に入ることができるでしょう。勿論、目で観るだけの鑑賞も可能ですが、希望者は展示室の受付で手荷物を預けて触ることができます。
今回も盛りだくさんのコレクション展ですが、特別展のついでではなく、時間のあるときにゆっくり鑑賞したいですね。今回は、ボランティアによるガイドツアーにも参加しましたので、より作品の意味がよくわかりました。コレクション展のガイドツアーは、毎週金・土・日に開催されています。