【感想】「高橋秀+藤田桜 素敵なふたり」(伊丹市立美術館、2019/11/2~12/22)レビュー

伊丹市立美術館で開催されている「高橋秀+藤田桜 素敵なふたり」(会期:2019年11月2日~12月22日)に行ってきました。この展覧会は、現在もご夫婦で活躍されている高橋秀さん(1930-)と藤田桜さん(1925-)のこれまでの創作活動を振り返る内容になっていました。

伊丹市立美術館「高橋秀+藤田桜 素敵なふたり」伊丹市立美術館「高橋秀+藤田桜 素敵なふたり」

 

この展覧会では、出品リストの配布はありませんでしたが、特に明確な展示構成はなかったように思います。対照的なお二人の作品が展示コラボしている感じでした。出品作品について知りたい方は、公式図録に出品リストが掲載されているので、そちらでご確認ください。公式図録は通販サイトでも購入できます。

 

高橋秀さんの作品は、丸みを帯びた独特のフォルムの抽象作品というイメージが強いですが、この展覧会では初期の作品も展示されていました。《ひからびたもの等》(1957年)や《黒い鳥と女》(1959年)、《アダム》(1959年)、《イブ》(1959年)等、独特の世界観を持つ作品を楽しめました。

 

そして、新人画家の登竜門と言われる安井賞を受賞した《月の道》(1961年)も展示されていました。これは、セメントを利用した斬新な作品ですが、その後は、こうした作風にこだわることなく、全く新しい作風へと舵を切ります。

 

こうして、高橋秀さんの代名詞とも言える、あの丸みを帯びたエロティックとも評される作品群が生まれることになります。NHKの番組「日曜美術館」でも紹介されていましたが、その制作風景はまさに工房での力仕事のような雰囲気でした。今回の展覧会では、番組内で制作されていた作品《環》(2019年)も展示されており、あのようにして制作された作品がこのように仕上がるのかと思うと感慨深いものがありました。

 

一方、奥様の藤田桜さんは、布を使ったコラージュ作品を制作されており、1952年創刊の『よいこのくに』では、藤田さんの作品が37年間にわたり表紙を飾っています。展覧会場では、こうした雑誌の表紙画や絵本の原画が数多く展示されていました。

 

藤田さんの作品は、その構図や色使いなどが実に美しく、展示室では絵本原画以外の布コラージュ作品も展示されていましたが、あまりの美しさに見とれてしまいました。実に才能豊かな方だと感心しました。既に90歳を越えられた藤田さんですが、「日曜美術館」で放送された様子を観る限り、実に元気で、滑舌も頭脳も明晰そのものという印象でした。こうした方々の存在こそ、日本の誇りに思えます。

 

この展覧会は、世田谷美術館(2019年7月6日~9月1日)を皮切りに、倉敷市立美術館(2019年9月14日~10月22日)、今回の伊丹市立美術館、北九州市立美術館(2020年1月4日~2月24日)へと巡回しています。

<公式図録>

ちょっと心がくすぐられる、生命感あふれる有機的なフォルムの作風で知られる高橋秀と、布を自在に使った愛らしく表情豊かな作品で、雑誌の表紙絵や絵本を手がけてきた藤田桜。東京、ローマ、倉敷の日々のなかで生み出された、ふたりの豊かな作品たち。(「BOOK」データベースより)



高橋 秀+藤田 桜――素敵なふたり(PR)
2020年01月01日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー