【感想】「入江早耶展 純真ロマンス遺跡 ~愛のラビリンス~」(兵庫県立美術館、2019/11/23~12/22)レビュー

兵庫県立美術館で開催されている「入江早耶展 純真ロマンス遺跡 ~愛のラビリンス~」(会期:2019年11月23日~12月22日)を鑑賞しました。この展覧会は、兵庫県立美術館が2010年から開催している「注目作家紹介プログラム〈チャンネル〉」の2019年版企画になります。

兵庫県立美術館「入江早耶展 純真ロマンス遺跡 ~愛のラビリンス~」兵庫県立美術館「入江早耶展 純真ロマンス遺跡 ~愛のラビリンス~」

 

今回は、岡山市出身で広島を拠点として活動されている入江早耶さんの展覧会です。この展覧会は、奈良時代の万葉集や平安時代の大和物語の中でも語り継がれている、神戸の三つの古墳にまつわる悲恋伝説を取り上げ、本作品ではその続編が創作されています。

 

二人の男性に求婚された娘はいずれか一人を選ぶことができず、自ら命を絶ち、彼らも娘の後を追ったという、兵庫の「菟原処女(うないおとめ)の伝説」をテーマとしています。今回は、美術館内の4ヶ所所(アトリエ1、ホワイエ、コインロッカー、美術情報センター)に展示された作品を巡り、愛のラビリンスを堪能するという試みがなされていました。

 

展覧会の背景となる「菟原処女の伝説」を知っている方にとっては、スムーズに理解できそうですが、初めて聞くという方にとっては理解するまでに少し時間が掛かるかもしれません。ただ、無料配布されているパンフレット(図録)が実によくできており、鑑賞前によく読まれた方はより楽しめたと思います。

 

展示作品は、入江さんが取り組んでいる消しゴムの消しカスを使った彫像アートになります。入江さんの消しカスアートは、2次元で表現された姿や歴史を3次元化してみたいという動機から始まった企画で、アトリエ1では、三人の墓に見立てたダンボールの前に三人の姿を模した消しゴムアートが展示されていました。カラフルで非常に精巧に制作されていました。

 

物語の歴史的な背景を考えると、さらに大きなサイズの作品を観たかったという気もしますが、消しカスを利用するというコンセプトからすると、このサイズが限界なのかもしれません。材料の量的限界が、作品のサイズの限界になってしまうとするなら少し残念な気もします。しかし、作品の発想そのものは大変興味深く今後の活躍が楽しみです。

2020年01月04日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー