【感想】「大正・昭和 神戸まぼろしの公会堂 コンペ再現!展」(神戸ゆかりの美術館、2019/11/23~2020/3/8)レビュー

神戸ゆかりの美術館で開催されている「大正・昭和 神戸まぼろしの公会堂 コンペ再現! 展」(会期:2019年11月23日~2020年3月8日)に行ってきました。この展覧会は、通常の美術作品を展示しているのではなく、設計図や透視図、CG透視図が主体になります。

 

かつて神戸では、現在の神戸市中央区にある大倉山に公会堂を建設する計画がありました。そして、それに向けた設計コンペが過去に2回開催されています。最初に開催されたのが大正期(1922~23年)の設計コンペで、次に開催されたのが昭和戦前期(1935年)の設計コンペでした。しかし、これらの建設計画は、関東大震災(1923年)や日中戦争(1937~1945年)、阪神大水害(1938年)などの影響で、実現には至っていません。

 

そこで、今回の展覧会では、今では幻となってしまった公会堂に関する設計コンペの結果を振り返ります。といっても、すべての資料が現存するわけではなく、残された資料を元にその設計図や透視図が展示されていました。

 

第1室では、大正期の設計コンペに関する展示がありました。大正期の入選結果は以下のとおりです。

 

<大正期の設計コンペ>

一等:前田健二郎/岡田捷五郎
二等:山本延次
三等:須藤員雄
選外佳作一席:岡本馨
選外佳作二席:前川勲
選外佳作三席:山本喜一/渡邊鋭一
選外佳作四席:矢部金太郎
選外佳作五席:橋本舜介

 

上記の内、原図が残っているのは、三等の須藤員雄、選外佳作二席の前川勲、選外佳作四席の矢部金太郎の設計図のみとなります。一方、原画の複写が残っている、一等の前田健二郎/岡田捷五郎の設計図、二等の山本延次の応募図案、選外佳作一席の岡本馨の設計図、選外佳作三席の山本喜一/渡邊鋭一の設計図案、選外佳作五席の橋本舜介の設計図に関しては、複写が参考出品として展示されています。

 

これらの入選作品を観ていると、やはり一等になった作品にはそれに相応しい魅力を感じました。どことなく大阪市中央公会堂に似ていますが、それもそのはずで、岡田捷五郎の兄・岡田信一郎が大阪市中央公会堂の設計を担当しています。そして、岡田捷五郎はその設計事務所で働いていました。

 

第2室と第3室では、昭和期の設計コンペに関する展示がありました。昭和期の入選結果は以下のとおりです。

 

<昭和期の設計コンペ>

一等:武田健三
二等:望月長與
三等:井上正男
三等:今井猛雄
佳作:大智誠
佳作:相澤珠壺
佳作:奥田譲
佳作:木村平五郎
佳作:柴田太郎

 

昭和期の設計図に関しては、二等の望月長與の設計図が全く残っていないようです。また、佳作の奥田譲に関しては、図案の透視図のみが展示されていました。

 

昭和期の入選作品に関しても、やはり一等の設計図はなかなかオシャレです。そして、昭和期の設計図になると、曲線を使った設計図が登場していました。また、和洋折衷ではありませんが、箱型の洋風建物に寺院風の屋根を付けた設計図が複数登場していました。少し、違和感を感じる外観ではありましたが、洋風化の流れの中で、和風への意地を感じました。

 

展覧会の最後では、現在の公会堂にあたる神戸文化ホールに飾られていた絵画4点(伊藤慶之助、西村功、元川嘉津美、山本萬司)とアカデミー・バー壁画が展示されていました。ここで初めて、美術館らしい作品を目にすることになりました。近年は、美術館で従来とは異なるさまざまな内容の展示が行われるようになり、来館する人の層も拡がりを見せているように感じます。これもひとつの時代の流れでしょう。

2020年01月23日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー